FOMC、利上げ前倒しとバランスシート縮小の議論始まる=FOMC議事録 2022年01月12日 09時49分

[ゴールデンチャート社] 2022年1月12日

 FRBは12月のFOMCでテーパリングの速度を速め、3月に終了させる決定をした。同時に公表された経済見通しから2022年内に3回の利上げが予想された。

 1月5日、12月のFOMC議事録が公表された。米国経済は順調な成長を堅持、雇用はパンデミック前の水準にまで改善しているが、インフレ率の高止まりは予想以上に長続きするとの見通しがFOMC参加者で共有された。同時に利上げ時期やペース、FRBのバランスシート縮小についてのディスカッションも行われた。

 FOMCは今回初めてバランスシート縮小のディスカッションをした。ただ、何らかの決定がなされたわけではなかった。議事録からは、利上げ時期前倒しへの圧力がかかったことが強く印象付けられ、バランスシート縮小の実施はFF金利のステップアップと並行して実施される可能性があることも分かった。FOMC参加メンバーの多くが、FOMCが認識している「最大雇用」に向けて進展を続けていると見ていて、一部メンバーは既に最大雇用に合致していると見ている。インフレ対策にターゲットが絞られた形となっている。FF金利の利上げは3月に開始される可能性が高まった情勢となってきた。

 このFOMC議事録が公表された後、金融市場は大きく反応した。株式市場では金融株が値上がりし、ハイテク株が値下がりした。個別株のボラティリティが高まった。長期金利が上昇、ドル円は円安に振れた。

金融政策正常化に関するディスカッション要旨

  • FOMCは金融政策の最終的な正常化に向けた議論を開始した。過去の金融政策正常化からの教訓、金融緩和を解除するための代替的アプローチ、正常化のタイミングと順序、長期的に見たFRBの適切なバランスシートの規模と構成について議論した。
  • 現時点の経済見通しとして、インフレ率の上昇と労働市場のタイト化が前回の正常化開始時に比べてはるかに強いものであると認識を共有した。
  • FRBのバランスシートは、名目GDP比で2014年末の第3次大規模資産購入プログラム終了時よりもはるかに大きいことを確認した。
  • FRB保有国債の加重平均満期が、前回の正常化開始時よりも短くなっていることに注目している。
  • FF金利の目標レンジが最初に引き上げられた後のある時点でバランスシートの縮小を開始することが適切であろうという点で合意した。
  • 強い経済見通し、高いインフレ率、大きなバランスシートの保有との現状認識から政策金利の正常化のペースを早める可能性についての指摘があった。
  • 多くのFOMC参加メンバーは、バランスシート縮小のペースは、前回の正常化時より速くなる可能性が高いと判断している。

金融政策正常化のプロセス

 金融緩和政策の解除と金融政策の正常化のプロセスは一般的に3段階で行われる。正常化のプロセスは複雑多岐に渡り、ゴールに向けて長い道のりとなる。現状に照らし合わせ、状況を整理してみよう。

①テーパリング 
 既に実施中。3月には毎月の資産購入を終了予定。
②FF金利利上げ
 
利上げ開始時期は未定だが、2022年内に3回の利上げが予想されている。インフレ対策を急ぐ必要性が高まり、利上げ開始が3月となる公算が大きくなってきた。
③バランスシートの縮小
 FOMCで議論が始まったところ。利上げ開始後、そう遠くない時期に段階的利上げと並行して実施される可能性がでてきた。

 FRBは今回のパンデミック対策としての金融緩和政策で米国債と政府系不動産担保証券を買い続け、FRBのバランスシートには約9兆ドルの膨大な資産が積み上がっている。これらの債券はいずれ償還期限を迎えるため、買い替えをしない限り自然にバランスシートは縮小される。過去の縮小プログラムでは、毎月の上限を決めるなど一定のルールを設定して縮小に臨んだ。開始時期、ペース、方法はさまざまな選択肢があり、今後、マーケットへの影響を勘案しながら、FOMCでの議論が続くとみられる。「バランスシートの縮小がマーケットに与える影響は利上げよりも大きい」との市場関係者の観測もあり、FOMCでの議論の行方に注視していきたい。

(H・N)

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■関連情報(外部サイト)

FOMC議事録(原文、FRB)