FRB、2022年の年利上げに向けて前進 2021年12月20日 11時19分

[ゴールデンチャート社] 2021年12月20日

 FRBは、12月15日(現地時間)、資産購入の減額ペースを加速、3月にはテーパリングを終了させる決定を発表した。FOMC参加メンバーの経済見通しおよびFF金利の想定も大幅に更新された。FOMC終了後の記者会見でパウエル議長は、「労働市場の改善とインフレ圧力の上昇に鑑み、資産購入縮小を加速させることを決定」と金融政策変更の理由を述べた。また、インフレに関して「長期的な目標である2%を大きく上回って推移しており、来年もその状態が続く」と、これまで繰り返し述べてきた「インフレは一時的」を撤回する形となった。9月の時点で利上げに消極的な参加メンバー9人が全員、利上げ賛成派に回った。

 FOMCの声明が発表された15日のNYダウ平均は、前日終値比383.25ドル高の3万5927.43ドルで終了。時事通信ニュースは「FOMCの政策決定内容が市場の想定内となったことで、早期の金融引き締めに対する警戒感が後退」と伝えた。翌16日の東京市場の午前の日経平均終値は、前日比444円53銭高の2万8904円25銭で終了、「目先の不透明感が払拭され、買い安心感につながった」と報じられた。為替は若干円安に振れ、米国債には大きな変動はなかった。11月初旬にテーパリング開始を発表したばかりの政策変更ではあったが、今回も市場の混乱はなく無事通過できたと見られる。

 FOMC参加メンバー18人が予測する「経済・政策金利見通し」を見ると、2022年の米国経済は順調に成長し、失業率は改善を続けコロナ前の水準に戻り、インフレも同年年末には2%台にまで下がると予想している。FFレートの想定中央値は、22年0.9%、23年1.6%、24年2.1%となっている。18人の参加メンバーのそれぞれの予測値をドットプロットしたチャートから、利上げは22年に3回、23年に3回、24年に2回実施されると予想され、FRBが最終着地点に設定している2.5%に向けた軌道がイメージできる。



  ※ FRB発表の FOMC Projections materialsを基にゴールデンチャート社が作成

 2022年最初の利上げは、早ければ5月のFOMCで、遅くとも7月のFOMCで決定される公算が大きい。テーパリングの終了は3月中旬、これまでのFRBの姿勢から判断して、テーパリング終了後暫くしてからと見るのが妥当。FOMC は、3月~7月の間には3月15~16日、5月3~4日、6月14日~15日、7月26日、27日に開催が予定されている。いつもなら3月に経済・政策金利見通しが発表される。

 こうした利上げ時期は現時点での予想に過ぎない。今後、インフレがどのように収束していくか、コロナ感染状況がどうなるか、不確定要因が多々ある。1年前にこれほどのインフレ率高騰をだれが予想できたかを思い返してみれば、予想が如何に不確かなものかが分かる。しかしながら、米国経済について毎月発表される消費者物価指数、個人消費、小売売上高、雇用統計などの経済指標をフォローし、FOMCの想定軌道にブレがないかチェックしていくことができる。消費者物価指数に大きな影響を与えている原油価格の動向も見逃せない。米国は連日10万人を越えるコロナ新規感染者が出ていて収束の兆しが見えない。ここにきてコロナ変異種オミクロン株が出現し、都市部を中心に感染が広がり始めている。もし、ロックダウンといった強い措置が実施されれば、これまでの経済再開はストップし、経済成長率や雇用市場で逆回転が始まるかもしれない。ヨーロッパ諸国ではコロナ感染拡大に伴いロックダウンに近い措置の実施を決めた国もある。パウエル議長は記者会見の席上、「ここ数週間のコロナ感染者の増加とオミクロン変異株の出現は、経済見通しに対するリスクとなっています」と述べている。

(H・N)

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