【2021年9月21日~22日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2021年10月01日 15時11分

金融政策決定会合における主な意見(2021年10月1日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。
  • 輸出や生産の増加トレンドが続くもとで、企業収益の改善は設備投資の持ち直しに繋がっており、企業部門の前向きの循環は途切れていない。
  • わが国経済は、輸出や生産が増加を続けているが、半導体不足や東南アジアの部品工場の操業停止が、企業の設備投資や資金繰りに及ぼす影響には注意が必要である。
  • 公衆衛生上の措置が継続する中、サービス分野を中心に内需は低迷を続けている。この間、ワクチン接種は一段と進捗したが、引き続き、感染症の帰趨と内需の回復ペースを注視する必要がある。
  • 世界経済は回復基調にあるが、中国経済に減速感がある。各種の規制強化が中国の中長期的な潜在成長力を引き下げないか、動向を注視したい。
  • 先行きのわが国経済については、当面の活動水準は、対面型サービスを中心に低めで推移するものの、ワクチン接種の進捗などに伴い感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、回復していく。
  • 国内経済は、8月の新型コロナウイルスの新規感染者の急拡大による対面型サービスの業況回復の遅れや、各種供給制約の顕在化による一部の製造業の生産調整が目先の下押し要因となるが、全体的には回復基調を維持しており、従来のシナリオを変更する必要はない。
  • 半導体などの部品調達難や物流停滞といった供給制約が拡大・長期化する可能性には、引き続き留意する必要がある。
  • ワクチン接種証明書の活用なども進めば、対面型サービスでも、感染抑制と消費活動の両立がより容易になると期待される。
  • 公衆衛生上の措置が緩和されれば、消費がいったん持ち直す可能性は相応にあるが、その持続力はやや心許ないと感じている。今後、雇用者所得の動向が消費者センチメントに及ぼす影響等を注視していきたい。
  • 諸外国の動向を踏まえると、ワクチン接種が進捗する中でも感染拡大の波は生じるとみられる。経済活動を考慮した行動制限のあり方について検討が進むことが期待される。


(2)物価

  • 消費者物価の前年比は、エネルギー価格などの上昇を反映して小幅のプラスに転じていくと予想される。
  • 消費者物価の前年比は、基準改定による携帯電話通信料の下押し寄与拡大から大幅に下方改定されたが、こうした一時的な要因を除くと小幅なプラスとなっており、現時点では物価の基調に変化はない。
  • 消費者物価の前年比は、指数の基準改定によって下方修正されたものの、携帯電話通信料等の影響を除くベースでは、底堅く推移しており、先行きにかけても失速するリスクは低い。
  • 消費者物価の前年比は、一時的な要因もありプラスに転じる公算が高いが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると「物価安定の目標」の達成は難しい。
  • エネルギー価格や原材料価格の上昇に伴う食料工業品の値上げといった身近な価格上昇が、家計の消費行動に与える影響は、注意してみていく必要がある。
  • 企業が資源価格等の上昇によるコスト増加を製品価格に転嫁できなければ、設備投資や人件費の抑制に繋がり、所得が増えない家計が消費を抑えることとなる。物価上昇のためには、そうしたサイクルの変化が必要である。
  • 国内ではコスト上昇の価格転嫁が難しい状況が続いており、成長分野への労働力移動や企業の新陳代謝の促進、イノベーション力や収益力の強化にかかる進捗を注視すべきである。


2.金融政策運営に関する意見

(1)金融政策運営全般

  • 引き続き、「3つの柱」による感染症への対応を通じて、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要である。
  • わが国では、緩和的な金融環境が企業等の経済活動を下支えしている状況は大きく変化していないことから、「特別プログラム」を含む現行の政策を継続していくことが適当である。
  • 「物価安定の目標」の実現には時間がかかると予想され、3月の点検により持続性と機動性を増した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けるべきである。
  • ワクチン接種が先行する国々では、経済が正常化し、ペントアップ需要が高まる中で、コロナ禍に対応するための政策を徐々に手仕舞う動きがみられているが、日本では、経済正常化以降のペントアップ需要の高まりを、2%の「物価安定の目標」の達成に繋げていくことが重要である。
  • 金融市場は総じて安定しているが、中国の不動産セクターの動向の国際金融市場への影響を含め、油断することなく経済・金融動向を注視し、必要であれば迅速に対応すべきである。
  • 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。
  • コロナ禍において効果を発揮してきた財政政策と金融政策のポリシーミックスは、経済が正常化していく脱コロナ禍局面においても重要である。
  • ポスト・コロナの経済社会と政策について、政府とビジョンを共有すべきである。財政政策と金融政策の連携はもとより、気候変動対応や成長促進、経済構造の転換などにおいても方向性を共有することが望ましい。
  • 感染症との戦いに加え、デジタル化や脱炭素化という重要な課題にわが国が取り組んでいくうえで、政府と本行が、同じような長い時間軸も意識しつつ、それぞれの役割を果たしていく必要がある。
  • 特別当座預金制度の運用では、金融調節に支障がないかを注意深く点検したい。
  • 金融政策の効果波及を高めるため、リスクマネーを含めて資金が拡大しながら循環するよう、余資を現預金で保蔵する家計に対し、金融資産投資についての理解浸透を図るべきである。


(2)気候変動対応を支援するための資金供給

  • 気候変動対応オペの対象となる投融資については、金融機関に具体的な判断を委ねつつ、一定の開示を求めることで規律付けを図る仕組みとなっており、全体として妥当な制度設計である。
  • 脱炭素化に向けた企業や金融機関の取り組みは緒に就いたばかりであり、当初は資金供給額が大きくならない可能性もあるが、気候変動対応オペが「呼び水」となり、民間部門の取り組みが進めば、資金供給額も増えていくと見込まれる。
  • 世界的に気候変動対応に向けた動きが本格化しつつあり、この時期に気候変動対応オペの仕組みを整えることは適切である。
  • グリーントランスフォーメーションの遅れにより、わが国の産業の空洞化が加速することのないよう、政府の一層の取り組みに期待するとともに、本行としても、気候変動対応オペを確りと実施していく必要がある。
  • 気候変動対応は、日本の国際競争力に直結し得るものであり、本行の使命である物価の安定に重要な影響があることを分かりやすく発信すべきである。
  • 気候変動対応オペは、説明責任の観点から、政策効果の検証が必要である。


3.政府の意見

(1)財務省

  • 気候変動対応オペは、日本銀行として気候変動問題に取り組む姿勢を示すものと受け止めている。年内の開始に向け、適切にご対応頂きたい。
  • 8月末に概算要求が締め切られ、来年度予算の編成作業が始まっている。新経済・財政再生計画のもと、目安に沿った予算編成や新たな成長の原動力となる分野への予算の重点化等、歳出改革に取り組んでいく。
  • 日本銀行には、政府との連携のもと、感染症対応を含め、必要な措置を適切に講じることを期待する。


(2)内閣府

  • わが国景気の先行きは持ち直しが期待されるが、内外の感染症の動向、サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクの高まりに注意が必要である。
  • 当面は、感染拡大の抑制を最優先に対策を進めるとともに、ワクチン接種状況を踏まえ、国民的議論を進め、感染対策と日常生活の回復に向けた取り組みの両立を進める。
  • 政府としては、躊躇なく機動的なマクロ経済政策運営を行う。日本銀行には、引き続き、緊密な連携をお願いする。


[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2021年9月21、22日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)