米が反発、「最低法人税」例外に=報復税を懸念、日本など譲歩 2025年06月30日 21時44分

 法人税の最低税率を15%とする国際課税ルールに関し、先進7カ国(G7)は米国企業への適用を除外することで合意した。このルールに対してはトランプ米政権が強く反発し、対抗策として「報復税」を検討。日本など他の6カ国は約140カ国・地域が参加した国際課税の枠組みが瓦解(がかい)するのを防ぐため、譲歩を強いられた格好だ。
 米国はバイデン前政権の下、国際課税の改革を主導。各国が法人税率の引き下げを競う「底辺への競争」に歯止めをかけようと、2021年10月には経済協力開発機構(OECD)加盟国などが最低税率を15%以上とすることで合意した。売上高が7億5000万ユーロ(約1270億円)以上の多国籍企業を対象に、親会社や子会社が低税率国にある場合、税負担が15%になるまで課税できる仕組みだ。
 だが、今年1月に大統領に返り咲いたトランプ氏は、国際課税ルールによって米国の課税自主権が奪われるとして強く反発。このルールは「米国では何ら効力や影響を持たないことを明確にする」との覚書を出した。
 さらに共和党主導の米議会は、トランプ氏の看板政策である大型減税関連法案に、米国に対して不公正な税制をとる国の企業などへの課税を強化する「899条項」を盛り込んだ。国際課税ルールへの「報復税」といえるこの措置に対し、他のG7諸国は「仮に日本に適用される場合は米国への投資に悪影響を与えかねない」(加藤勝信財務相)などと懸念。結局、28日発表のG7合意では「国際課税ルールと米国の制度を『共存』させる」との名目で米企業へのルール適用を免除し、米国側は「899条項」を撤回することで妥協が成立した。米国は多国籍企業に独自の最低税率を課す取り組みを進めるという。
 ただ、今回のG7合意には、国際課税ルールのもう一つの柱である巨大IT企業への「デジタル課税」の扱いは盛り込まれていない。カナダが導入したデジタル課税を問題視するトランプ氏は「全ての貿易交渉の打ち切り」を表明。カナダはデジタル税の撤回に追い込まれるなど、混乱はなお続いている。 

海外経済ニュース