分断克服へ問われる実行力=深刻な低成長打開目指す―韓国新大統領 2025年06月03日 23時58分

3日、ソウルで、韓国の革新系最大野党「共に民主党」の李在明前代表が大統領選で優勢となり歓喜に沸く支持者ら(AFP時事)
3日、ソウルで、韓国の革新系最大野党「共に民主党」の李在明前代表が大統領選で優勢となり歓喜に沸く支持者ら(AFP時事)

 【ソウル時事】韓国の尹錫悦前大統領による「非常戒厳」宣言に端を発した大統領選。その過程では、保革や世代などさまざまな形で社会の「分断」が表面化した。勝利した革新系「共に民主党」の李在明氏は、どう一体感を取り戻すのか。深刻な低成長をいかに脱するか。有権者が期待した実行力が試されている。
 ◇強力な政権基盤
 「統合はただの主張ではなく、第一の責務だ」。李氏は選挙戦最終日の2日に開いた記者会見で、こう強調した。
 だが、その言葉とは裏腹に、李氏が選挙戦で打ち出した最大の争点は、尹氏を中心とする「内乱勢力」への審判。保守系「国民の力」候補の金文洙氏を同勢力の一味と位置付けることで勝利を引き寄せた。
 政権与党となる共に民主党は国会で多数議席を占め、次期総選挙の2028年4月まで国会の構図は変わらない。強固な政権基盤を持つ李氏の政策推進を妨げる要素はほぼない。
 朴槿恵元大統領の弾劾後に発足した文在寅政権は、勢いに乗じて「(積み重なった過去の不正をただす)積弊清算」を掲げ、前政権を厳しく追及。保守層の反発を招き、分断を激化させた。
 李氏は「特定の人物を狙った政治報復はしない」と語る一方で、「内乱勢力の罪は断固として罰する」とも強調。「前政権たたき」をするのか態度をあいまいにしている。共に民主党の中堅議員は「(積弊清算で)起訴されたが無罪になった人も多い。検察という刃を乱用してはだめだ」と自戒を込める。
 ◇分断の原因は経済
 期日前に李氏に投票したというソウル在住の会社員女性(31)は「経済をもう少し良くしてほしい。物価が上がって、月給では生活できない」と嘆いた。
 輸出主導型の韓国経済に対する米国の関税政策の打撃は今後本格化する見通しで、韓国銀行(中央銀行)は5月29日、今年の成長率見通しを1.5%から0.8%に引き下げた。
 李氏は、社会の分断の深まりに関し「根本的原因は経済にある。富があまりにも一カ所に偏り過ぎている」と指摘。経済成長でパイを増やすことを最優先課題に挙げる。財政の健全性を重視した尹政権と異なり、財政出動に積極的。大統領就任直後に「緊急経済対応タスクフォース」を設置し、補正予算などで景気浮揚策を打ち出す考えだ。
 ただ、韓国の先進国化に伴い、成長鈍化は持続的な傾向だ。少子化による人口減少も今後追い打ちをかける。
 「革新系支持者が多い働き盛りの40~60代前半に対し、貧困に苦しむ高齢者や就職できない若者らが『周縁』に追いやられている」(専門家)との見方もある。景気回復をほぼ唯一の政策的争点に掲げただけに、失敗すれば、失望を招くだけでなく、分断を加速させることになりかねない。 

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