円、年初来20%安=対ドルで突出、30円下落―外為市場 2022年09月08日

 外国為替市場で、対ドルの円相場は、他の主要通貨に比べて下落幅が突出している。7日に約24年ぶりの円安水準を更新するなど、今年に入って円売りが加速。昨年末に比べて30円弱、20%も下落した。インフレ抑制に向けた米国の大幅利上げによる「ドル全面高」の流れが続く中、円売りは特に歯止めがかからない状態だ。
 昨年末に1ドル=115円台だった円は、7日の海外市場で一時144円99銭まで売られた。他通貨も対ドルで売られているが、下落率はユーロが12%、英ポンドは15%弱にとどまる。
 この大きな要因は金融政策の違いだ。三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは、「米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な金融引き締め姿勢を強め、他の中央銀行もこぞって引き締めに動く中、大規模緩和を続ける日本だけが取り残されている」と指摘。金利差の拡大が意識され、円は売られやすい通貨となっている。
 ロシアのウクライナ侵攻などを背景とした資源高で日本の貿易収支が悪化していることも、円売りが止まらない一因だ。エネルギーなどを輸入に依存しているため、輸入企業が円を売ってドルを買う必要性は増している。円が比較的取引がしやすく流動性が高いため、新興国通貨などと比べても下げ幅が大きくなっているとの見方もある。
 ただ、このところの急ピッチの円安進行は、日本の金融当局の手詰まり感が見透かされているためだとも指摘される。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、「節目となる140円を超えた際の当局の発言内容から、円買い・ドル売り介入がないと確認できたと市場に受け止められ、まだ円を売れると思わせてしまった」と分析する。 

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