医療提供、地域中核病院に「義務」=民間は「協力」、水際罰則強化も―感染症・コロナ特措法改正案判明 2022年08月30日

 次のパンデミック(世界的大流行)に備え、政府が取りまとめた感染症法や新型コロナウイルス対策の特別措置法改正案の全容が30日、判明した。高度な医療を提供する特定機能病院や地方医療の中核を担う地域医療支援病院に、感染症対応での医療提供を「義務付け」る一方、民間医療機関には感染対策に「協力」するよう明記。水際対策の「指示」に応じない個人への罰則も設けた。
 病床逼迫(ひっぱく)で十分な医療を提供できなかった反省を踏まえ、医療機関や個人に対する国の権限を強化した。政府は週内にも新型コロナ感染症対策本部を開き、こうした内容を決定。感染症法などの改正案は今秋の臨時国会に、新型コロナ対策の特措法改正案は来年の通常国会に提出する。
 感染症法等改正案では、平時から都道府県と医療機関の間で病床確保・発熱外来設置に関する協定を締結。違反した医療機関には「勧告・指示・公表」を行い、特定機能病院としての承認「取り消し」などの罰則も設ける。
 また、自治体がホテルなどに宿泊療養施設を確保するため、協定を結ぶ仕組みも設ける。新たな事務で自治体に生じる費用は国が一定割合を負担。医薬品や医療機器、マスクなどの確保に向け、緊急時には政府が事業者に対し、増産の指示・支援を行うことも可能とする。
 機動的なワクチン接種に向け、厚生労働相が知事ら首長に臨時接種を「指示」できることとし、医師・看護師以外の医療関係者らもワクチン接種を行う枠組みを整備する。
 水際対策では、個人に自宅待機などを「指示」できるとし、待機中の報告に応じない場合の罰則も創設。検疫の実効性を確保する狙いがある。
 新型コロナ対策の特措法も改正する方針。感染拡大時の自治体財源を確保するため、「地方債の特例規定創設」などを盛り込む。一方、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置適用時の強制力のある措置の在り方などは、年末にかけさらに調整する。
 次期通常国会には感染症対策の司令塔機能強化に向けた法案も提出する。2023年度中に内閣官房に「内閣感染症危機管理統括庁(仮称)」を設置する方針。平時から感染症対応の総合調整役を担うこととし、トップの「感染症危機管理監」には官房副長官級、次長の「感染症危機管理対策官」に厚労省医務技監を充てる。国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し発足する専門家組織は25年度以降の設置を目指す。 

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