デフレ脱却、問われた本気度=「物価のめど」後も緩和圧力―12年上期議事録・日銀 2022年07月29日

 日銀は29日、2012年上半期(1~6月)に開いた金融政策決定会合の議事録を公表した。欧州債務問題などによる海外経済減速や円高の影響が懸念される中、市場ではデフレ脱却に向けた日銀の「本気度」を問う声が拡大。日銀は2月会合で、金融緩和に向けた「政策姿勢をより明確化」(白川方明総裁=肩書は当時、以下同=)するため「中長期的な物価安定のめど」を導入した。ただ、その後も追加緩和を求める声はやまず、日銀が政策対応に腐心する時期が続いた。
 「中央銀行にとって憲法のようなものであって非常に大きな話だ」。2月14日の会合で、白川氏はこの日のテーマについてこう強調した。先立つ1月25日に米連邦準備制度理事会(FRB)が2%の「インフレ目標」を導入。これをきっかけに、日銀の緩和姿勢に「分かりにくいとの批判が相次いでいる」(山口広秀副総裁)状況下での会合だった。
 焦点となったのは、当時掲げていた「中長期的な物価安定の理解」の見直し。米国が「目標」を掲げたことで「日米の差をうんぬんする論調が目立つ」(西村清彦副総裁)ようになったため、「腰が引けているという大きな誤解」(同)を解き、「デフレ脱却に向けた強い意志と姿勢を対外的に明示」(中村清次審議委員)することを狙った。
 そのため、「理解」を「めど」「目安」、あるいは「目標」に変更するのか、その英訳はどうするかなど、言葉の選択も細かく吟味。結果、消費者物価指数の前年比上昇率で当面1%を「めど」とし、同時に緩和強化も決定した。
 続く3月13日の会合でも、デフレ脱却に向けた「パッケージ」として、成長基盤強化を支援する融資の拡充を打ち出した。それでも、「市場の一部には日銀は能動的な姿勢に変わったのか確信が持てないという声もある」(宮尾龍蔵審議委員)。宮尾氏が提案した追加緩和は反対8、賛成1で否決された。
 結局、4月27日の会合で13年度まで「めど」の物価上昇1%に届かないとの見通しが示され、再び追加緩和に追い込まれる。白川氏は「非常に思い切った措置で、非常に意味の重たい措置」と強調。ただ、前年から断続的に緩和策を繰り出してきたこともあり、「金融政策の効果を冷静に見極める段階だ」とも付け加え、さらなる緩和期待はけん制した。
 その後、小康状態だった欧州債務問題が、ギリシャのユーロ圏離脱観測やスペインの金融システム不安などを背景に再燃。日銀の緩和姿勢を疑う金融市場では円高圧力が続き、政治家などから日銀に対応を催促する声が収まることはなかった。
 日銀は議事録を10年後に半年分ずつ公表している。 

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記者会見する日銀の白川方明前総裁=2012年2月、東京・日本橋本石町の日銀本店
記者会見する日銀の白川方明前総裁=2012年2月、東京・日本橋本石町の日銀本店

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