GX債の償還財源が焦点=20兆円、民間投資の呼び水に―政府 2022年07月27日

 政府は脱炭素社会の実現に向け、今後10年間に官民で150兆円規模の投資を目指す。このうち、政府が20兆円の資金を投じ、民間企業の投資を引き出す「呼び水」効果を狙う。前例のない規模の支援のため、新たな国債「GX経済移行債(仮称)」を発行し、資金を調達するが、その償還財源の見通しは立っていない。
 経済産業省がまとめた「クリーンエネルギー戦略」では、2030年に官民で年17兆円の投資が必要と試算。半導体製造拠点・データセンター整備に3兆5000億円、再生可能エネルギー普及に2兆円、電気自動車(EV)を含む次世代車導入に1兆8000億円などさまざまな分野で巨額投資が必要だ。
 政府は長期にわたる手厚い支援措置を講じることで、民間企業が回収期間の長い大規模投資に積極的に取り組める環境を整える。
 政府資金20兆円を賄うGX債は、将来の償還財源を明確にして発行する「つなぎ国債」を想定する。その財源候補の筆頭が、電気料金に上乗せされている「再生可能エネルギー賦課金」の活用だ。現在は再エネの固定価格買い取りに使われているが、買い取り期間が順次終了することで浮いた資金を充当する。ただ、電気代に占める賦課金の割合(20年度)は企業で16%、家庭で12%に上る。GX債の財源に転用されれば、今後も企業・家庭にとっては重い負担が続くことになる。
 温室効果ガス排出量に応じて課税する炭素税も財源に浮上している。すでにその一種として、石油石炭税に上乗せされる「地球温暖化対策税」があるものの、税収は2200億円と小規模。事業活動で生じた同ガス排出量に課税するといった炭素税の本格導入には、経済界からの反発も予想される。 

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