「悪い円安」懸念再び=5年ぶり一時118円台、物価圧力一段と 2022年03月15日

 外国為替市場で円安・ドル高が再加速している。15日の東京市場で円相場は一時、約5年2カ月ぶりに1ドル=118円台へ下落。ウクライナ危機による原油高の打撃を円安が増幅させる「悪い円安」への懸念が再燃した。背景にあるのはインフレに対抗するため金融引き締めに動く米欧と、大規模緩和を続ける日本の金融政策の違い。市場では120円台に下落する可能性も指摘され始めた。
 円相場は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、3月初めに安全資産とされるドルと円がともに買われ、いったんはやや円高方向に進んだ。ところが、欧州中央銀行が10日、インフレ抑制へ量的緩和策の縮小ペース加速を決め、金融政策正常化の継続が確認されると、再び円安が加速。利上げが予想される15、16両日の米連邦公開市場委員会を前に、一時118円45銭を付けた。
 14日の米債券市場は利上げペース加速の思惑から長期金利が上昇。日米の金利差から円売り・ドル買いの動きが強まっており、「市場は120円台を意識し始めた」(外為仲介業者)という。
 ウクライナ危機を受けて、原油や小麦などの価格が高騰しており、円安がさらに上昇圧力となる。販売価格に転嫁できなければ企業収益が圧迫される一方、転嫁が進めば家計の負担増となる。経済界からは円安の影響について「マイナスの方が大きいと思う」(桜田謙悟経済同友会代表幹事)と懸念の声も上がる。
 日銀は17、18両日に金融政策決定会合を開くが、欧米と比べて低いインフレ率にとどまっている現状では、景気を冷やす恐れのある利上げなど金融引き締めに動く可能性は低い。このため、資源価格上昇への対応は「当面は(燃油補助金など)財政支援が中心になる」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)とみられる。 

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1ドル=118円台前半に下落した円相場を示す電光ボード=15日午後、東京都港区の外為どっとコム
1ドル=118円台前半に下落した円相場を示す電光ボード=15日午後、東京都港区の外為どっとコム
1ドル=118円台前半に下落した円相場を示す電光ボード=15日午後、東京都港区の外為どっとコム
1ドル=118円台前半に下落した円相場を示す電光ボード=15日午後、東京都港区の外為どっとコム

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