捜査のシナリオに誤算=尹氏「違法性」主張―韓国 2025年01月26日 21時07分
【ソウル時事】韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」宣言を巡り、検察が早期の起訴に踏み切ったのは、拘束期間の延長を認められず、捜査のシナリオに狂いが生じたためだ。尹氏は捜査当局の取り調べをほとんど受けないまま公判に臨み、法の死角を突いて捜査の違法性を争う構え。裁判には不安が付きまとう。
大統領による内乱という異例の事件に対し、検察は当初、高官犯罪捜査庁(高捜庁)などと捜査権限を競い合ったが、結局は高捜庁と警察による合同捜査本部に譲った。同本部が尹氏を拘束した後、高捜庁と検察が10日ずつ捜査した上で、検察が起訴の可否を判断する方針だった。
しかしソウル中央地裁は、検察が申請した拘束期間の延長申請を2度にわたり不許可とした。この結果、検察は自身による10日間の補完捜査を実施せずに起訴することを余儀なくされた。
背景として、文在寅前政権下で設立された高捜庁の法律的な弱点も指摘される。高捜庁法には捜査対象の犯罪として内乱罪は明示されておらず、同庁が事件を送致した後に検察が補完捜査を行えるかどうかについても規定はない。
検察は、既に起訴された金龍顕前国防相の捜査結果や、軍幹部らの証言などから、尹氏の内乱罪の立証が可能だとの立場だ。金氏の起訴状には、非常戒厳解除を求める決議を可決するため国会に集まる議員を「銃を撃ってでも引きずり出せ」と尹氏が指示したとの証言が盛り込まれている。
これに対し尹氏側は、高捜庁の「違法捜査」で集められた証拠に証拠能力はないと公判で主張するとみられる。尹氏側はこれまで、捜査機関の取り調べに応じず、弾劾審判で一連の証言に反論してきた。並行して行われることになる刑事裁判でも、尹氏側は同様の主張を展開するとみられ、間接的な捜査に依拠した検察側の主張が受け入れられるかどうかは不透明だ。