改憲陣営への献金、反対派の4倍=60億円実らず否決―豪国民投票 2024年04月08日 06時11分

憲法改正案の国民投票を前に賛成を呼び掛ける運動員ら=2023年9月、オーストラリア南東部メルボルン(EPA時事)
憲法改正案の国民投票を前に賛成を呼び掛ける運動員ら=2023年9月、オーストラリア南東部メルボルン(EPA時事)

 【シドニー時事】オーストラリアで昨年10月に実施された先住民の地位確立に関する憲法改正案の国民投票で、賛成陣営への献金額が反対陣営の4倍に相当する約6000万豪ドル(約60億円)に上ったことが分かった。豪選挙管理委員会が今月公表した政党・運動団体の収支報告書で判明した。賛成陣営は巨額資金を広告などに投じたが、支持を広げられず、否決に終わった。
 運動期間に当たる昨年3~10月の収支報告によると、改憲を推進した与党・労働党と主要な賛成派団体は、大企業などから合計約6000万豪ドルを受領し、その約9割を支出した。一方、改憲に反対した野党・保守連合や主要団体への献金合計は約1500万豪ドル(約15億円)で、その1.7倍を支出。運動期間前の収入も取り崩したとみられる。
 選管は1万5200豪ドル(約150万円)超の献金者の名前を公表。賛成陣営への大口献金では、四つの大手銀行や資源、通信、スーパーマーケットなどの上場企業が名を連ねた。このうち最多はオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の250万豪ドル(約2億5000万円)。反対陣営への献金は小口の個人献金が中心だった。
 改憲案はアボリジニなどの先住民を「最初の豪州人」と明記し、議会や政府に意見具申できる代表機関を設置するという内容だった。賛成陣営は豊富な資金を使い大規模な広告・宣伝を打ったが、反対票60%で惨敗した。政府・与党が代表機関の具体像を示さなかったことや、先住民優遇に対する反発の広がりが否決の要因と指摘されている。 

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