「警官不在」「ガラス散乱」=乱射遭遇の女性証言―ロシア 2024年04月01日 14時34分

銃乱射テロで火災に見舞われる「クロッカス・シティー・ホール」=3月22日、モスクワ郊外(AFP時事)
銃乱射テロで火災に見舞われる「クロッカス・シティー・ホール」=3月22日、モスクワ郊外(AFP時事)

 ロシア・モスクワ郊外のコンサート会場で起きた銃乱射テロから10日が過ぎた。夫と2人で3月22日夜の事件に遭遇した医師のスベトラーナさん(32)が時事通信の取材に応じ、発生前の時点で「(大規模イベントにいるはずの)警官の姿がなかった」などと当時の様子を語った。実行犯は入念に下見したとされ、手薄な警備の隙を突かれた可能性がある。やりとりは次の通り。
 ―来場の経緯は。
 ロックグループの公演を知り、夫に頼んでチケットを購入した。地下鉄で最寄り駅に着いたのが22日午後7時半。会場に入る際、手荷物検査を通過した。コンサートに必ずいる警官の姿が見当たらず驚いた。夫が外で喫煙したかったから、上着は預けなかった。私は売店の行列に並んで水を買い、外にいる夫を待った。
 ―発生の瞬間は。
 午後7時58分、花火か爆竹のような音が聞こえた。何が起きたのか分からなかったが、大勢の人が走ってきて「銃撃だ」と。周囲にガラス片が散乱し、みんな物陰に隠れたり、床に伏せたりした。携帯電話はすぐつながらなかった。ようやく通話できるようになると、夫は「銃を持った連中が玄関から侵入して人を撃っている。逃げろ」と伝えてきた。離れている間も私たちは電話を切らず、行動や逃げ道について話した。
 通用口に人々が殺到し、私もそこを抜けたら地下1階だった。最初の通路は行き止まり。落ち着いて指示に従い、別の通路を進んだ。会場のスタッフも「初めて通る」と話していた。階段を上ると屋外に出た。
 ―その後は。
 夫とは近くの観覧車の下で合流できた。どうやって現場を離れたらいいのか。タクシーは最大20分待ちで、地下鉄に乗るのも怖い。ホールから煙の臭いが漂ってきた。観覧車を目当てに来たカップルの車が止まったので、夫が頼み込んで同乗させてもらった。安全な場所まで離れて下車し、バスに乗り換えたら、逃げてきた人々で満員。誰もがおびえた様子だった。
 ―事件に遭遇して。
 とても恐ろしく、体がまひしたようだった。なぜそんなことが起こり得るのか、理解できない。丸腰で無実の人々の命が多く失われたことは、全く受け入れられない。帰宅後も最初の夜はなかなか眠れず、人質になる夢を見て2時間ほどで目が覚めた。翌日は頭痛に襲われ、鎮痛剤を飲んで出勤した。今も薬を服用している。 

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