捜査の手、緩めず=ロシア大統領への逮捕状発付から1年―国際刑事裁判所 2024年03月16日 14時30分

国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長=2023年7月、東京都港区
国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長=2023年7月、東京都港区

 【ブリュッセル時事】国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)が、ウクライナに侵攻するロシアのプーチン大統領に戦争犯罪の容疑で逮捕状を出してから、17日で1年。プーチン氏の身柄拘束は現実的ではないが、ICCは新たにロシア軍幹部にも逮捕状を発付し「ウクライナに関する責任を果たし続ける」(カーン主任検察官)方針を改めて打ち出している。
 プーチン氏の嫌疑は、ウクライナの占領地からの違法な子供らの連れ去りに関与した戦争犯罪。ICCは、プーチン氏の刑事責任を立証する「合理的な根拠がある」と説明し、リボワベロワ大統領全権代表(子供の権利担当)にも逮捕状を出した。反発したロシアは「無実と知りつつ(プーチン氏らに)刑事責任を負わせた」などと主張し、報復として赤根智子ICC所長らを指名手配している。
 国際刑事司法を巡る政治に詳しいライデン大(オランダ)のトム・バウタラー助教は、逮捕状は「非常に重要で象徴的な動き」だったと指摘。ICCが組織としての重要性を示したと振り返る。
 ICCに加盟しないロシアには、逮捕状の効力は及ばない。それでもバウタラー氏は、逮捕状の存在によって事実上、ICC加盟国に入国できないプーチン氏が「一層孤立を深めている」と話した。一方で、ウクライナ市民や戦況には「大きな影響を及ぼしていない」とも述べた。
 ICCは今月5日、ウクライナの電力インフラを攻撃した戦争犯罪の容疑などで、ロシア軍司令官2人に逮捕状を発付。カーン主任検察官はX(旧ツイッター)で、「さらなる令状請求もためらわない」と捜査継続を強調した。
 バウタラー氏は、ICCが今のところ「ある程度立証の容易な犯罪」を選んでいると指摘。その上で、実績を重ねて今後、ロシアによる民間人殺害やジェノサイド(集団殺害)の本格的な追及に取り組む可能性があるとの見方を示した。 

海外経済ニュース