米欧、イスラエルに圧力=ガザ食料危機巡り―米長官「物資あふれさせる」 2024年03月14日 14時43分

ブリンケン米国務長官=13日、ワシントン(AFP時事)
ブリンケン米国務長官=13日、ワシントン(AFP時事)

 【ワシントン時事】パレスチナ自治区ガザで深刻化する食料危機を緩和するため、米欧がイスラエルへの圧力を強めている。イスラエルが厳しい検問で支援物資の搬入を制限しているためだ。各国は空や海からの食料支援を試みているが、本格的な事態打開にはイスラエルの対応が不可欠だ。
 「国を守るために必要なことをするときでさえ、支援を届けることは最優先にすべきだ」。ブリンケン米国務長官は13日の記者会見で、イスラム組織ハマス壊滅を掲げてガザ攻撃を続けるイスラエルを名指しし、直接訴えた。
 昨年10月にハマスとの衝突が始まって以降、イスラエルはガザ封鎖を強化し、支援物資の搬入を制限した。1日500台のトラックが支援物資をガザに運び込んでいたが、衝突後は激減。現在は200台前後に回復したが、国連の世界食糧計画(WFP)のマケイン事務局長は「1日にトラック300台分の食料が必要だ」と訴える。
 特に懸念されるのは、イスラエルの攻撃で甚大な被害を受けたガザ北部。マケイン氏は「支援を大幅に拡大しなければ、飢饉(ききん)が差し迫る」と警告。ガザ保健当局によると、12日時点で、北部の病院では栄養失調などを理由に子供23人が死亡した。2月末には支援物資を積んだトラックに群衆が殺到し、100人以上が死亡する事件も起きている。
 地元メディアによれば、イスラエル軍高官は「ボトルネックはイスラエル側ではない」と述べ、ガザで活動する国連機関に支援停滞の責任を押し付ける。国連側はガザでの安全な活動にはイスラエル軍の協力が必要だと反論。ガザ住民の約4分の1に当たる50万人以上が飢餓の危険にさらされていると警鐘を鳴らす。
 国内外の圧力を受けるバイデン米政権は2日、ガザ上空から支援物資を投下。地中海の島国キプロスからの海上輸送を支えるガザ沿岸での臨時埠頭(ふとう)の整備を表明し、支援拡大を急ぐ。13日には欧州連合(EU)や英国などとテレビ会議を開き、ガザ北部を含め、イスラエルがより多くの検問所を開放することが重要だとの認識で足並みをそろえた。
 海上輸送が実現すれば、1日最大200万食分の食料などが運び込まれる見通しで、ドイツやイタリアなども取り組みを後押しする。だが、ブリンケン氏は「代替策ではなく補完するものだ」と指摘し、あくまで陸上輸送が「最も重要な方法」だと強調。ガザを「支援物資であふれさせる必要がある」と述べ、イスラエルに協力を迫っている。 

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