極右、ポルトガルで躍進=欧州議会選も議席増か 2024年03月12日 17時07分

ポルトガルの新興極右政党シェーガのベントゥーラ党首=10日、リスボン(EPA時事)
ポルトガルの新興極右政党シェーガのベントゥーラ党首=10日、リスボン(EPA時事)

 【パリ時事】10日投開票のポルトガル議会(一院制、定数230)選挙で、新興極右政党シェーガは有権者の政治不信を追い風に躍進を遂げ、二大政党に次ぐ第3党としての存在感を確かなものにした。独裁体制が打倒された1974年のカーネーション革命から4月で半世紀。ポルトガルでは歴史的経緯により極右への拒絶反応が強かったが、隣国スペイン同様、そうした政治状況は曲がり角を迎えている。
 欧州では2022年にイタリアで極右中心のメローニ連立政権が発足し、23年のオランダ総選挙で極右・自由党が第1党となった。欧州連合(EU)全27加盟国が6月に実施する5年に1度の欧州議会選でも、極右は破竹の勢いを続けると予想されている。
 ポルトガル選管によれば、シェーガが総選挙で獲得したのは48議席(暫定値)。党勢は22年の前回選挙で得た12議席の4倍に拡大した。中道左派与党の社会党は前回120議席から77議席に激減。79議席で勝利した野党・社会民主党中心の中道右派勢力は2増にとどまり、極右の台頭が浮き彫りだ。
 有権者がシェーガを支持する背景には、同党が掲げる強硬な不法移民対策への期待のほか、左右二大政党への不信がある。
 8年余りにわたって社会党政権を率いてきたコスタ首相(62)は昨年11月、政府主導の脱炭素化事業に絡む不正疑惑で辞表を提出。捜査当局は首都リスボンの首相官邸や関係省庁を家宅捜索し、国内は騒然となった。
 今年1月には、大西洋に浮かぶポルトガル領マデイラ諸島で別の汚職事件が発覚。今度は社民党所属の自治州知事らが辞意表明に追い込まれた。選挙戦は「政治とカネ」の問題が主な争点に。19年の結党以来、「腐敗政治の打破」を訴えてきたシェーガにとっては絶好のチャンスとなった。
 シェーガのベントゥーラ党首(41)は選挙結果を受け、「歴史的な結果だ」と歓迎。社民党と連立を組めば「議会の過半数を占めることは明白だ」と述べ、政権参画への野心をアピールした。
 ただ、ベントゥーラ氏は少数民族のロマ系住民に対する差別的発言で知られ、中道右派との間に溝がある。モンテネグロ社民党党首(51)は選挙後、シェーガとの協力を改めて否定。次期政権の枠組みは不透明だ。 

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