地上無人兵器を本格投入へ=戦略産業相「AIとドローンの年」―遠隔操作銃で40日防衛・ウクライナ 2024年03月12日 15時39分

ウクライナが開発した無人戦闘車両「アイアンクラッド」(フェドロフ副首相兼デジタル化担当相のフェイスブックより)
ウクライナが開発した無人戦闘車両「アイアンクラッド」(フェドロフ副首相兼デジタル化担当相のフェイスブックより)

 【キーウ時事】ウクライナのカムイシン戦略産業相は10日、3年目に入ったロシアの侵攻について「今年は人工知能(AI)と無人兵器(ドローン)の年になる」と述べ、地上無人兵器を本格的に投入する計画を明らかにした。首都キーウ(キエフ)で時事通信の単独インタビューに応じた。ロシア軍の車両や艦艇を破壊するなどの戦果を挙げてきた無人航空機と無人艇に加え、地上戦での兵力損耗を抑えるために無人戦闘車両などの開発・量産を急ぐ方針だ。
 カムイシン氏によると、東部アウディイウカ近郊にはロシア軍の突撃を幾度となくはね返した監視所があった。ロシア軍は多大な犠牲を出しながらも、40日かけてようやく同所を制圧。ただ、そこには兵士の遺体ではなく、砲塔に据え付けられた機関銃1丁の残骸だけがあった。
 機関銃はウクライナが開発した「シャブリャ」と呼ばれる無人兵器。搭載されたカメラと暗視装置を使い、後方から遠隔操作でロシア軍を射撃していた。兵士は銃弾の補充とバッテリー交換のために、たまに監視所を訪れるだけだったという。
 カムイシン氏は「(戦局を左右する)ゲームチェンジャーは無人兵器以外にあり得ない」と断言。シャブリャのような兵器は「兵士を最前線から遠ざけ、貴重な兵力の損失を避けるために有用だ」として、兵力や砲弾数で劣るウクライナ軍は無人兵器を最大限活用する必要があると語った。
 ウクライナ軍は無人戦闘車両などの開発も進めている。「今年は空と海だけでなく、地上でも無人兵器が大規模展開される」とカムイシン氏。ウクライナ戦争は「第2次大戦にドローンを足しただけの戦い」から「本格的なドローン戦争」に変容するとの見方を示した。
 ウクライナ、ロシア両軍はいまだ、標的の選別や攻撃の意思決定に人が関与しない完全自律型兵器の実用化には至っていない。同氏はただ、飛行中に操縦士との通信が妨害されても標的まで自律飛行して攻撃したり、互いに通信しながら編隊を組んで「スウォーム(群れ)」攻撃を行ったりするAI搭載型ドローンを年内に実戦投入できると話した。
 世界的にAIを搭載した自律型兵器の開発を規制する声が高まっていることについては「ロシア軍に対抗するために開発を加速し、いち早く前線に展開する必要がある。適切な規制はその後に行う」と述べ、侵略を止めることが先決だと訴えた。 

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インタビューに答えるウクライナのカムイシン戦略産業相=10日、キーウ(キエフ)
インタビューに答えるウクライナのカムイシン戦略産業相=10日、キーウ(キエフ)

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