中国、台湾統一へ愛国教育=士気くじく意図も―現地民意、離れる一方 2024年03月11日 18時10分

台湾対岸に位置する中国福建省の海岸=1月18日、アモイ市
台湾対岸に位置する中国福建省の海岸=1月18日、アモイ市

 【北京時事】中国の習近平政権は台湾統一に向け、台湾の人々の中国人意識を高める愛国教育に乗り出す。平和統一に利用するだけでなく、武力侵攻時の士気をくじく意図もありそうだ。ターゲットは台湾の青少年で、中国大陸に招き教育費を肩代わりすることなどが想定されるが、台湾では既に台湾人意識が強く、「中国化」教育は思惑通りに進むか見通せない。
 「台湾では『自分は中国人ではない』と思わせる洗脳が行われており、台湾同胞が自らを中国人ではないと考えるのは悲劇だ」。全国人民代表大会(全人代)の「台湾省代表団」会議で9日、台湾出身の教育学者・陳雲英氏は台湾人への愛国教育の必要性を訴えた。習政権の意向をくんだ主張だ。
 代表団のほとんどが、台湾にルーツを持ちながらも中国大陸出身者のため、台湾で生まれ育った陳氏の発言はメディアの注目を集めた。陳氏は「中国は世界トップの経済大国になる」とし、中国人として生きていく利点を強調。台湾の小学校を卒業した子どもたちを台湾対岸の中国福建省に呼び寄せ、無償教育を受けさせるよう提案した。
 台湾では中国との分断から70年以上がたち、若者を中心に台湾人アイデンティティーが拡大。台湾の大学による世論調査では「自分は中国人」と考える人は1992年に25%いたが、2023年には2%。「台湾人」は17%から61%に増えた。「台湾人であり中国人でもある」は32%だ。
 中国では今年1月に「愛国主義教育法」が施行された。台湾統一のため宣伝教育を強化することが盛り込まれた。習国家主席は今月6日、内外の愛国勢力を結集し平和統一の取り組みを進めるよう指示しており、それを支えるのが愛国教育だ。
 今後、習氏が平和統一は難しいと判断した場合は、武力統一の選択肢に軸足を移す可能性がある。武力行使や港湾封鎖に踏み切った際、「台湾人アイデンティティーが薄ければ、厭戦(えんせん)気分が広がる」(軍事専門家)との指摘もある。 

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