香港「国安条例」制定へ急進=中国、全人代で催促か―統制強化に高まる懸念 2024年03月09日 14時29分

香港政府トップの李家超行政長官=2023年7月、クアラルンプール(EPA時事)
香港政府トップの李家超行政長官=2023年7月、クアラルンプール(EPA時事)

 【北京時事】香港政府がスパイ行為などを取り締まる「国家安全条例」の制定作業を急ピッチで進めている。8日には香港立法会(議会)に条例案を提出し、審議が始まった。折しも北京では中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開会中で、中央政府から条例制定を急ぐよう催促された可能性もある。
 「国家の主権や安全を守り、香港の長期的な安定を確保するために可能な限り早く完了させる必要がある」。中国国営新華社通信などによると、丁薛祥筆頭副首相は7日開かれた全人代の香港代表団との会合で、国安条例の制定は「香港の憲法上の責任だ」と述べ、早期成立を促した。条例案の内容に関しては論評しなかったが、「中央政府は制定を全面的に支持している」と表明した。
 6日に開かれた全人代の香港代表団による分科会では、立法会議員の陳振英氏が同条例について「意見公募が完了し、われわれも多くの建設的な意見を出した」と報告。別の議員の霍啓剛氏は分科会後、記者団に「香港の安全を守るためにできるだけ早期に制定するべきだ」と訴えた。
 香港政府トップの李家超行政長官は5日に全人代開幕式に出席後、急きょ香港に戻った。6日まで北京に滞在する予定だったが、1日早く切り上げており、北京で中央政府から条例制定を早急に進めるよう指示を受けたことも考えられる。
 一方、国家機密の窃取やスパイ行為、外国勢力による干渉などが犯罪対象となる国安条例を巡っては、社会統制の強化や拡大解釈を懸念する声が内外で高まっている。キャメロン英外相は「香港の人々の自由と権利の行使に悪影響を与える」と批判。米国務省も「反対意見を排除するために利用される可能性がある」と異議を唱えた。
 世界の86の人権団体も共同声明を出し、「政府に対する平和的な批判も犯罪になりかねない」と非難。条例制定は「人権状況に壊滅的な結果をもたらす」と警告した。
 香港記者協会は政府に意見書を提出。「国家機密」の定義が曖昧だとして、条例違反を懸念して報道を抑制するなど「萎縮効果を生む恐れがある」と危機感を募らせている。 

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中国の全国人民代表大会(全人代)の香港代表団による分科会=6日、北京
中国の全国人民代表大会(全人代)の香港代表団による分科会=6日、北京

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