LNG輸出停止、反発強く=エネ安保を懸念、民主党内は賛否―米 2024年02月06日 14時34分

 【ワシントン時事】バイデン米政権による液化天然ガス(LNG)輸出認可の一時停止措置が、米国内で波紋を広げている。与党民主党内では、気候変動対策を重視する左派が歓迎する一方、穏健派は雇用やエネルギー安全保障への懸念から撤回を要求し、足並みの乱れが表面化。野党共和党やエネルギー業界も反発している。
 「労働者や企業、同盟国を犠牲にし、環境活動家に迎合する駆け引きであれば、即座に阻止するために全力を尽くす」―。上院エネルギー・天然資源委員会の委員長を務める民主党のマンチン氏は、疑問を呈した。
 同氏は「同盟国や貿易相手国への責任がある」とも強調。米国の輸出が減れば、ウクライナ侵攻を続ける資源大国ロシアに資すると指摘した。天然ガス生産地を地盤とする同党下院議員10人も大統領宛ての書簡で反対を表明した。
 共和党のスコット上院議員らも「米国からの輸出が制限されれば、ロシアやイランなどが生産を増やすだけだ」と主張。LNG大手も「近視眼的な政治的決定だ」と批判する。
 米エネルギー情報局(EIA)によると、米国のLNG輸出は2022年までの5年間で約3.5倍に急拡大。ロシアからの輸入が困難になった欧州向けが急増した。
 米政府は先月下旬、「環境負荷を再検証する」として、輸出認可を一時停止し、審査基準を見直すと発表した。化石燃料の増大を問題視する民主党左派は「天然ガスが気候変動の解決策ではない」(下院議員)などと歓迎している。
 米議会上院は今週、公聴会を開き、エネルギー省高官から意見聴取する予定。米政府は、認可取得済みの事業は対象外で「同盟国へのエネルギー供給に影響はない」と強調するが、「投資動向などへの悪影響はある」(米シンクタンク)との指摘も出ている。 

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