危機脱却、見えぬ道筋=インフレ直撃、8日に総選挙―パキスタン 2024年02月06日 15時15分

5日、イスラマバード近郊で取材に応じる小売店経営ワカス・メムドさん
5日、イスラマバード近郊で取材に応じる小売店経営ワカス・メムドさん

 【イスラマバード時事】8日に総選挙が行われるパキスタンでは、経済危機下で発生した激しいインフレが国民生活を直撃している。主要政党は危機脱却を公約の中心に掲げるが、実効性には疑問符が付く。
 「全ての品物が高い。1〜2年前と比べ値段が倍になっている」。首都イスラマバード近郊で小売店を営むワカス・メムドさん(38)はこう言ってインフレを嘆いた。
 ウエーターのムハマド・ラミズさん(32)の月収は約3万パキスタンルピー(約1万6000円)。4歳と2歳の子供を抱え、家族で唯一の働き手だ。物価高騰にもかかわらず給料は上がっていないといい、「生活はとても大変。どうすることもできない」とこぼした。
 パキスタンのインフレは、輸入頼みの燃料や食料の世界的な価格高騰、通貨安などが要因。政府によると、今年1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で約28.3%上昇した。
 近年、インフラ整備目的で中国から借り入れた債務の返済が財政を圧迫。国土の3分の1が冠水したとされる2022年の洪水被害も財政悪化に拍車を掛けた。外貨準備高は昨年の一時期、輸入数週間分の水準にまで落ち込んだ。
 シャバズ・シャリフ前政権は緊縮策に取り組み、国際通貨基金(IMF)から金融支援を引き出すことに成功。デフォルト(債務不履行)は免れたが、状況の好転は見通せない。
 選挙戦を優位に進める与党イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)は公約で「25年末までにインフレ率を1桁台に下げる」と宣言。今後5年間で1000万人以上の雇用創出もうたっている。しかし、そこに至る具体的な道筋は示していない。
 地元紙ドーンは社説で「どの政党も、困難な経済的課題に取り組むための実現可能な短期・長期的戦略を持ち合わせていない」と批判した。 

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