シリア住民、「終わりのない惨事」=冠水した村、絶望の農家―トルコ大地震1年 2024年02月05日 15時00分

シリア北西部イドリブ県トゥルール村の冠水した畑=1月23日(住民提供)
シリア北西部イドリブ県トゥルール村の冠水した畑=1月23日(住民提供)

 【カイロ時事】トルコ南部で昨年2月6日に発生した大地震で甚大な被害が出た隣国シリア。北西部イドリブ県のトゥルール村は、地震発生後にオロンテス川の堤防が崩れ、冠水した。それから1年。堤防の復旧作業は遅々として進まず、何度も水が村に流れ込んだ。農業は壊滅的な打撃を受け、時事通信の電話取材に住民は「終わりのない惨事が続いている」と意気消沈した様子で語った。
 2011年に始まった内戦が今も終結していないシリアでは、北西部をアサド政権と対立する反体制派が支配する。トルコ国境に近いトゥルール村は反体制派側。住民によれば、戦火を逃れてたどり着いた移住者が多く、約1500世帯が麦や豆、モモやザクロを育てて生計を立てていたという。
 当時の報道によると、この村では地震で約40人が死亡。地震発生から3日後の9日朝、堤防が決壊し、膝下まで水に漬かった。「われわれは二重の災害に襲われた。それ以降、状況は何も変わっていない」。子供7人を養う農家のアリ・アブデルカデルさん(39)は諦めたように語った。
 政府の手が及ばない地域のため、復旧作業は住民の自助努力に頼るしかないという。堤防の補強を試みたが、川の水位が10センチ高くなると水が村に流れ出し、避難した人々が暮らすテントはたびたび浸水。地面を1メートル掘れば水が染み出て泉のようになる。村の畑は1月以降水が引いておらず、来シーズンに実を付ける可能性があったザクロの木もどうなるか分からないという。
 生活は2カ月に1度の慈善団体の配給頼みで、それ以外の支援の手は届かない。アブデルカデルさんは「惨め。あの時、死んでいれば良かった」と声を震わせた。 

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