「支援がない」「何も変わらず」=被災者、政府対応に不信―トルコ大地震1年 2024年02月05日 15時39分

トルコ南部カフラマンマラシュ郊外に設置された仮設住宅=1月29日
トルコ南部カフラマンマラシュ郊外に設置された仮設住宅=1月29日

 昨年2月のトルコ・シリア大地震から1年を迎え、トルコ政府は広範囲に及ぶ被災地で膨大ながれきの撤去や公営住宅の新築を進めている。しかし、先行きの見えない厳しい暮らしを続ける被災者の間では「われわれは置き去りにされている」と政府への不信感も募っている。
 被害が大きかったトルコ南部カフラマンマラシュ。中心部の通りには仮設コンテナの店舗が並ぶ。実業家らや支援団体などが提供したもので、自分の店が壊れ、稼ぎを失った人々がほそぼそと営業を続ける。
 ハサン・ビルヤルさん(40)は知人のセイフェティン・ナジャルさん(55)と一緒に、くじ引きで当たったコンテナで軽食や紅茶を売ってしのぐ生活だ。コンテナで香水を売り始めたが、被災地では「香水など誰も買いに来ない」と断念。「われわれは被災者で家も店も壊れたのに、この店の電気は自腹。政府が助けるべきだが全く支援がない」と手厳しい。
 電気代は月額約2000リラ(約9700円)。先月分は滞納し、「いつ止められてもおかしくない」とナジャルさんは話す。地震1年に合わせ、被災地の復興状況を視察するエルドアン大統領に何か言いたいことはあるか記者が尋ねると、ビルヤルさんは「『あなたがここに来ても、全て隠されて何も見えなくされている』と言いたいね。結局は何も変わらない」と諦め顔だ。
 市内では損壊した建物の解体作業が続く。政府は更地にした土地を地権者と協議した上で取得し、新たな開発を進める予定だ。
 壊されているビルの隣に、照明がともった堅固な外観のレストランがあった。調理師チャブシュ・タヌルさん(51)によると、店主と当局が補償面で折り合いが付かず、立ち退きを拒んでいるという。タヌルさんは「ここは歴史的な場所だが、全然考慮されない。なぜ損壊を逃れた建物を明け渡す必要があるのか」。政府が行う復興計画についても「他の場所でがれきが放置されたまま、ここに建物を造るのは単なるパフォーマンスだ」と憤った。 

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2023年2月の大地震で被災し、仮設コンテナで店を営むセイフェティン・ナジャルさん(左)とハサン・ビルヤルさん=1月29日、トルコ南部カフラマンマラシュ
2023年2月の大地震で被災し、仮設コンテナで店を営むセイフェティン・ナジャルさん(左)とハサン・ビルヤルさん=1月29日、トルコ南部カフラマンマラシュ

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