住宅・雇用確保など課題山積=再建、違法建築対策も道半ば―トルコ大地震1年 2024年02月05日 14時32分

2023年2月の大地震で壊れたままの建物=1月29日、トルコ南部カフラマンマラシュ
2023年2月の大地震で壊れたままの建物=1月29日、トルコ南部カフラマンマラシュ

 【イスタンブール時事】トルコ南部を震源とするマグニチュード(M)7を超える複数の大地震の発生から6日で1年。被災地では、避難生活を余儀なくされている人々向けの新たな住宅の建設や、雇用創出など生活再建への取り組みが続く。しかし、支援の遅滞など課題は山積したままで、復興は道半ばだ。
 トルコ政府によると、大地震では国内11県で約1400万人が被災。死者約5万3500人、負傷者は約10万7000人に上る。震源に近い隣国シリアでも約6000人が死亡したとされる。ただ、シリア側の主な被災地はアサド政権と対立する反体制派支配地域で、被害の実態が把握しにくい状況だ。
 トルコのエルドアン大統領は地震後、家を失った被災者用に65万戸の公営住宅を建設し、うち約32万戸は1年以内に完成させると表明。震災復興への指導力をアピールし、苦戦が予想された昨年5月の大統領選で僅差で再選を果たした。
 エルドアン氏は今月3日、被災地の南部ハタイ県で演説し、「今年末までに20万戸を引き渡し、われわれの約束の大部分を果たす」と強調した。今月中に約4万6000戸が供給される見通しだが、目標には程遠い。トルコ当局によれば、今も仮設住宅には約70万人が暮らしている。
 トルコ地震では、特に耐震性が不十分な建物が多数倒壊し、違法建築も問題視された。被災地を視察したトルコ土木学会のシネム・コルグ氏は取材に対し、「低品質の資材が検査を受けずに使われ、建築技術も基準に見合っていなかった。建物の柱が省かれたり、もろい構造が放置されたりしていた」と明かす。
 コルグ氏は、トルコ北西部地震(1999年)などに見舞われた同国では耐震基準が法律でたびたび強化されてきたが、抜け穴も多く既に形骸化していると指摘。「昨年の地震が転換点になってほしいが、あいにく大きな変化はない」と話す。その上で「余震が続く地域で恒久的な建物を造るのは合理的ではない。検査状況も不透明で総体的な(建築)政策も欠けており、地震のリスクも再評価すべきだ」と訴えている。 

その他の写真

トルコ大地震の被災者向けに建設された公営住宅。建国の父ケマル・アタチュルクとエルドアン大統領の肖像の垂れ幕が下がっている=1月29日、トルコ南部カフラマンマラシュ郊外
トルコ大地震の被災者向けに建設された公営住宅。建国の父ケマル・アタチュルクとエルドアン大統領の肖像の垂れ幕が下がっている=1月29日、トルコ南部カフラマンマラシュ郊外
トルコ大地震の被災者向けに建設が進む公営住宅=1月29日、トルコ南部カフラマンマラシュ
トルコ大地震の被災者向けに建設が進む公営住宅=1月29日、トルコ南部カフラマンマラシュ

海外経済ニュース