米政権、ユダヤ人入植者に制裁=西岸暴力「耐え難い」と責任追及―世論対策も、イスラエル反発 2024年02月02日 14時28分

ヨルダン川西岸で上がる煙=2023年11月(AFP時事)
ヨルダン川西岸で上がる煙=2023年11月(AFP時事)

 【ワシントン時事】バイデン米政権は、イスラエルが占領するヨルダン川西岸で続くパレスチナ人襲撃を巡り、ユダヤ人入植者への制裁に踏み切った。西岸で入植者による襲撃が急増し、国内外で対イスラエル非難の声が高まっていることに背中を押された形だが、大統領選を意識した国内対策の側面も強い。イスラエルは反発しており、襲撃の収束につながるかは見通せない。
 バイデン米大統領は1日、パレスチナ人襲撃に関与したユダヤ人入植者への制裁を可能とする大統領令に署名。米政府は、西岸での襲撃や放火、破壊行為などに関わった21〜32歳のイスラエル人の男4人に制裁を科すと発表した。米国内の資産が凍結され、米国人との取引が禁止される。
 バイデン氏は大統領令で「過激な入植者による暴力、強制移住、破壊が耐え難い水準に達している」と強調。入植者の暴力が中東地域の平和と安定への「深刻な脅威」になっていると非難した。
 ブリンケン国務長官も声明を出し、イスラエルに「暴力を阻止し、責任を追及するため、さらに努力すべきだ」と訴えた。イスラエルのネタニヤフ首相は「法を破る全イスラエル人に対し行動している」と反論。「(米国による)例外措置は不要だ」と受け入れない姿勢を示している。
 イスラエルとイスラム組織ハマスが昨年10月に戦闘を始めた後、西岸ではパレスチナ人襲撃事件が急増。バイデン政権は責任追及の必要性をたびたび主張し、昨年12月には襲撃に関与した入植者に対するビザの発給制限措置を発表するなど、暴力を容認しない姿勢を強めていた。
 背景の一つには、イスラエルを支持するバイデン政権が「パレスチナ人殺害を防ぐために十分な措置を講じていない」(米紙ニューヨーク・タイムズ)といった不満が、アラブ系米国人や若年層を中心に渦巻いていることがある。
 実際、制裁に関する発表は、11月の大統領選の激戦州の一つでアラブ系が多数居住する中西部ミシガン州をバイデン氏が訪問する直前に行われた。バイデン政権はアラブ系や若年層の世論の動向を気に掛けているとみられ、制裁には支持のつなぎ留めを図る思惑もありそうだ。 

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