インフレ率低下は歓迎するも、なお確信が得られない=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2024年02月01日 10時14分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は1月31日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、フェデラル・ファンド金利(FF金利)の目標レンジを5.25~5.50%に維持する決定をした理由として、「昨年後半、インフレ率が低下したことは歓迎すべきことですが、インフレ率が目標に向かって持続的に低下していることを確信させる証拠が必要です」と述べ、いつもの発言を繰り返す形となりました。PCE物価総合指数は12月までの12ヵ月間で2.6%上昇し、コアPCE物価指数は2.9%上昇、FOMCが目標としている2%に接近していますが、なお慎重な姿勢を崩していません。

 利下げ開始時期については、「政策金利がこの引き締めサイクルのピークに達している可能性が高く、経済が予想通りに幅広く進展すれば、今年のある時点で政策抑制を縮小し始めるのが適切であろうと考えています」と明言を避けました。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2024年2月1日

 私たちは、米国民のために「最大雇用」と物価の安定の促進という二重の使命に引き続き真剣に取り組んでいます。経済は、私たちの二重の使命の目標に向かって順調に進展しています。失業率が大幅に上昇することなく、インフレ率は高水準から低下しました。これは非常に良いニュースです。しかし、インフレ率はまだ高すぎ、インフレ率低下の持続的な進展は確実ではなく、先行きは不透明です。私は、インフレ率を目標の2%に戻すことに全力を尽くしていることを、米国民の皆様にお約束したいと思います。物価安定の回復は、すべての人に恩恵をもたらす力強い労働市場環境を持続的に実現するために不可欠です。

 本日、FOMCは政策金利の据え置きと保有証券の削減の継続を決定しました。過去2年間、私たちは金融政策を大幅に引き締めてきました。私たちの強力な行動により、政策金利は引締め状態へと大きく移行し、経済活動やインフレに効果が現れています。タイトだった労働市場は緩和され、インフレ率の低下が続いていることから、雇用とインフレの目標達成に対するリスクは、より良いバランス状態に移行しつつあります。最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示唆しています。

 昨年第4四半期のGDP成長率は3.3%でした。2023年通年のGDP成長率は3.1%で、これは旺盛な消費者需要と供給状況の改善に支えられたものです。住宅セクターの活動は、住宅ローン金利の高騰を反映して、昨年は低調でした。高金利は企業の固定投資を圧迫しているようです。

 労働市場は依然として逼迫していますが、需給バランスは改善傾向にあります。過去3ヵ月間の雇用者数の増加は月平均16万5000人で、前年同期を大幅に下回るペースですが、依然として堅調です。失業率は3.7%と依然低水準。力強い雇用創出は労働者供給の増加を伴っています。労働力率は、この1年、特に25歳から54歳で均衡して上昇し、移民はパンデミック前の水準に戻りました。名目賃金の伸びは緩やかになり、求人数は減少しました。雇用と労働者の格差は縮小したものの、労働需要は依然として供給力を上回っています。

 インフレ率は過去1年間で著しく低下しましたが、長期目標である2%を依然上回っています。12月までの12ヵ月間、PCE物価総合指数は2.62%上昇し、変動の大きい食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコアPCE物価指数は2.9%上昇しました。昨年後半、インフレ率が低下したことは歓迎すべきことですが、インフレ率が目標に向かって持続的に低下していることを確信させる証拠が必要です。家計、企業、見通し担当者を対象とした広範な調査や金融市場の指標に反映されているように、長期的なインフレ期待は依然として十分に定着しているようです。

 FRBの金融政策は、米国民のために「最大雇用」と安定した物価を促進するというFRBの使命に導かれています。私たちは、高インフレが購買力を低下させ、特に食料、住宅、交通といった必需品のコスト上昇に対応できない人々に大きな苦難をもたらすことを痛感しています。

 過去2年間で、私たちは政策金利を5.25%引き上げ、証券保有残高を1.3兆ドル以上減少させました。私たちの引締め政策は、経済活動とインフレに下押し圧力をかけています。当委員会は本日の会合で、フェデラル・ファンド金利(FF金利)の目標レンジを5.25~5.50%に維持し、保有有価証券を大幅に削減するプロセスを継続することを決定しました。

 私たちは、政策金利がこの引き締めサイクルのピークに達している可能性が高く、経済が予想通りに幅広く進展すれば、今年のある時点で政策抑制を縮小し始めるのが適切であろうと考えています。しかし、パンデミック以降、経済は様々な面で予測者を驚かせており、インフレ目標2%に向けた継続的な進展は確実ではありません。経済見通しは不透明であり、インフレリスクには引き続き注意を払っています。適切であれば、現在のフェデラルファンド金利の目標レンジをより長く維持する用意があります。

 労働市場の逼迫状態が緩和し、インフレの進展が続いているため、雇用とインフレの目標達成に向けたリスクはより良いバランスに移行しています。政策引締め状態を早急にあるいは過度に緩和すれば、インフレ率の改善が一転し、最終的にはインフレ率を2%に戻すために、さらなる引締め政策が必要になる可能性があります。同時に、引締め政策の緩和が遅すぎたり少なすぎたりすれば、経済活動や雇用を不当に弱める可能性があります。FF金利の目標レンジの調整を検討する際、当委員会は、入ってくるデータ、進展する見通し、および、リスクバランスを慎重に評価します。当委員会の予想では、インフレ率が持続的2%に向かっているとの確信が深まるまでは、目標レンジを引き下げることは適切ではありません。私たちは引き続き、会合ごとに決定を行います。

 私たちは引き続き、インフレ率を2%の目標まで低下させ、長期的なインフレ期待を適切に維持することに全力を尽くします。物価の安定を回復することは、最大限の雇用と安定した物価を長期的に達成するために不可欠です。最後に、私たちは、私たちの行動が全国の地域社会、家族、企業に影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、公的使命のために行われるものです。私たちFRBは、最大限の雇用と物価安定の目標を達成するために全力を尽くします。

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■関連情報(外部サイト)

FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)