インフレ目標2%に向け明確な進展があった=FOMC議事録 2024年01月04日 10時22分

[ゴールデンチャート社] 2024年1月4日

 米連邦準備理事会(FRB)は12月12日、13 日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公開しました。今回の会合でFOMCは、前回の会合に引き続きフェデラルファンド金利(FF金利)を5.25~5.50%に据え置く決定をしました。FOMC参加メンバーは会合の中で、2023年はインフレ目標2%に向けて明確な進展があったことを確認し、これまでの金融引締め政策は効果を上げているとの見解を示しました。一方で、インフレ率の上昇が家計、特に物価上昇を吸収する手段が限られている家計に引き続き打撃を与えることに懸念を示し、インフレ率は当委員会の目標を依然上回っており、インフレ率の2%への持続的な回復を確信するには、インフレ圧力が和らいでいることを示すより多くの証拠が必要であると指摘がありました。

FOMC議事録(要旨) 

■米国経済の現状と見通しに関する議論

 米国経済の現状に関する議論では、第3四半期の実質GDPの伸びが予想を上回った後、最近では経済活動の伸びが鈍化していることを示唆している。雇用の増加は依然として堅調であるものの、今年(2023年)初めから緩やかになっており、失業率は低水準を維持している。インフレ率は過去1年間で緩和したが、当委員会の長期目標である2%を上回る高水準にあるとの見方が示された。

 経済見通しについて参加メンバーは、2024年の実質GDP成長率は冷え込み、労働市場のリバランスは続き、失業率は現在の水準からやや上昇すると予想している。インフレに関しては予想外のデータに基づき2024年以降のインフレ予想を下方修正した。参加メンバーは、現状は金融金融引締め状態であり、経済活動とインフレを抑制しているように見えるとの見方をしめしている。金融引締め政策に加え、インフレに関するデータがより良好であることから、参加メンバーは、インフレと雇用はより均衡状態に向かっていると見ている。しかし、参加メンバーは依然としてインフレ・リスクに高い関心を寄せている。

インフレに関する議論では、参加メンバー全員が、当委員会のインフレ目標2%に向けて2023年に明確な進展があったことを確認した。参加者は、インフレ率の上昇が家計、特に物価上昇を吸収する手段が限られている家計に引き続き打撃を与えることを懸念した。参加メンバーは、インフレ率が当委員会の目標を依然上回っており、インフレ率の2%への持続的な回復を確信するには、インフレ圧力が和らいでいることを示すより多くの証拠が必要であると指摘。

 参加メンバーは、これまでのインフレ率低下の進展を振り返り、総合インフレ指数とコアインフレ指数の両方の改善に留意し、これらの総合的な指標の構成要素について議論した。エネルギー価格とコア財価格は、最近では下落またはほとんど変化していないものの、コアサービス価格は依然として高いペースで上昇しており、構成要素によってばらつきがあることを確認した。サプライチェーンの正常化、労働参加率の上昇や移民受け入れによる労働供給の押し上げ、生産性の向上、国内石油生産の増加などが供給の改善に寄与したと評価。また、金引締め政策が、特に企業の固定投資、住宅、自動車、その他耐久消費財などの金利感応度の高いセクターの需要の伸びを抑制するのに寄与したとの指摘があった。

 家計部門に関しては、多くの家計の健全なバランスシート、堅調な労働市場および所得増に支えられ、個人消費は堅調に推移しているとの指摘があった。小売売上高の伸びは10月に著しく鈍化したが、参加メンバーの中には、11月には特に年末商戦に関連した好調な売上高が報告されたと述べたメンバーもいた。労働所得の伸びの鈍化やパンデミックに関連した過剰貯蓄の減少など、個人消費が軟化する一因となりそうないくつかの要因についての言及があった。これに関連して、多くの参加メンバーは、クレジットカード、買い切り型ローン、給料日前ローンなど、家計のクレジット利用が増加していること、多種類の消費者ローンの延滞率が増加していることを指摘した。

 ビジネスセクターは、比較的楽観的な見方もあれば、2024年の成長鈍化を予想する見方もあった。複数の参加メンバーは、金利上昇が将来の新規プロジェクトを見直すきっかけとなり、企業投資や雇用の軟化につながっていると指摘。中小企業は信用状況が厳しく、返済の延滞が増加しているとのコメントもあった。

 労働市場は依然としてタイトであるものの、良好なバランスを保っていると評価した。多くの参加メンバーは、名目賃金の伸びは引き続き鈍化しており、企業関係者は賃金の伸びがさらに低下すると予想していると指摘した。数人の参加メンバーは、給与の伸びが年初(2023年)から大幅に鈍化していると指摘した。参加メンバーは、労働供給の改善と労働需要の緩和の両方が、労働市場のバランス改善に寄与したと見ている。労働力人口の増加と移民の増加により供給が改善し、堅調な生産性の伸びも経済の生産力を支えている。

 参加メンバーは総じて、経済見通しを取り巻く不確実性が高いと認識。インフレと経済活動の両方に対する上方リスクとして、多くの家計のバランスシートの強さが続いていることを根拠に、経済活動の勢いは、現在の評価よりも強い可能性があるとの指摘があった。さらに参加メンバーは、昨年夏以降、急激に金融引締めの金融環境が強まったことを確認したうえで、適切な範囲を超えた金融緩和は、当委員会のインフレ目標達成を困難にする可能性があるとの指摘があった。参加メンバーは、地政学的な動きが世界のエネルギー価格や食料品価格に与える影響、サプライチェーンの改善期を経てコア商品価格が反発する可能性、ニアショアリング(事業の地方に移転)やオンショアリング(国外に移管していた業務を自国に移転)が労働需要やインフレに与える影響など、インフレの上振れリスクの要因についても言及した。参加メンバーが指摘した経済活動の下振れリスクとして、過去の政策引き締めの効果が予想以上に大きくなる可能性、家計のバランスシートが著しく弱まるリスク、一部の海外経済の成長率低下による負の波及の可能性、地政学的リスク、銀行の信用が一段と引き締まるリスクの残存などがあった。

■金融政策決定に関する議論

 参加メンバーは、最近の経済指標が経済活動の伸びが第3四半期の力強いペースから鈍化したことを示唆していることに留意した。雇用の増加は年初(2023年)から緩やかになったものの引き続き堅調で、失業率は低水準を維持し、労働市場の需給バランスが改善する兆しが続いている。インフレ率はこの1年で緩和したものの、依然として高水準。また、家計や企業が直面する金融・信用状況の厳しさが、経済活動、雇用、インフレの重荷になりそうだと指摘。参加メンバーは、インフレ率を当委員会の目標である2%まで低下させるとの決意を固めた。

 現在の経済状況、経済活動とインフレの見通しへの影響および、リスクのバランスに照らして、参加メンバー全員が、今回の会合でフェデラルファンド金利の目標レンジを5.25〜5.50%に維持することが適切と判断した。また、以前に発表された「連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシート縮小計画」で説明されているように、FRBの証券保有高を削減するプロセスを継続することが適切であるとの見解で一致した。

 金融政策の見通しについて、参加メンバーは、政策金利は今回の引き締めサイクルのピークかそれに近い水準にあるとの見方を示した。参加メンバーは、2023年中にインフレ率が低下し、特に直近の6カ月間のインフレ率が低下していることや、製品市場や労働市場で需給バランスが改善する兆しが強まっていることを指摘。参加メンバーの何人かは、当委員会のこれまでの金融政策が、総需要の伸びを鈍化させ労働市場を冷やす上で意図した効果を上げていると指摘、供給状況の改善と相まって、これらの進展がインフレ率を長期的に2%に戻すのに役立っていると判断した。ほとんどの参加メンバーは、SEP(FOMC参加者の経済見通し)が示しているように、当委員会の金融引締め政策が家計と企業の支出を軟化させ、今後数年間のインフレ率のさらなる低下を促すと予想している。

 提出されたSEPの予測では、ほぼすべての参加メンバーが、インフレ見通しの改善を反映して2024年末までにフェデラルファンド金利の目標レンジを引き下げることが適切であるとの見方を示した。しかし参加メンバーは、自分たちの見通しは極めて高い不確実性を伴っており、目標レンジのさらなる引き上げが適切となるような形で経済が発展する可能性もあると指摘。また何人かは、現在の予想よりも長い期間、目標レンジを現在の値に維持することが正当化される状況もありうると指摘。参加メンバーは総じて、金融政策を決定する際に慎重かつデータに依存したアプローチを維持することの重要性を強調し、インフレ率が当委員会の目標に向かって持続的に低下することが明らかになるまで、暫くの間、金融引締め状態に留まることが適切であることを再確認した。

 今後の金融政策決定に影響するリスク管理上の留意点について、参加メンバーは、インフレの上振れリスクは減少したと見ているものの、インフレは当委員会の長期目標を依然大きく上回っており、物価安定に向けた進展が停滞するリスクが残っていると指摘。参加メンバーの多くは、金融引締め政策をどれくらいの期間維持する必要があるかに関連する不確実性を強調し、過度な引締め政策は経済の下振れリスクを招くと指摘した。

 参加メンバーは、FRBのバランスシート縮小の継続的なプロセスは、マクロ経済目標を達成するための当委員会の包括的なアプローチの重要な一部であり、バランスシートの縮小はこれまでのところ順調に進んでいるとの見解を示した。参加メンバーの中には、当委員会のバランスシート縮小計画は、潤沢な準備残高と整合的であると判断される水準をいくらか上回った時点で、バランスシートの規模縮小を減速させ、その後停止させることを示す意見もあった。

(H・N)

[ゴールデン・チャート社]

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■関連情報(外部サイト)
FOMC議事録(原文、FRB)