FF金利はピークかその近くにある=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2023年12月17日 14時40分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は12月13日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、「私たちは、政策金利がこの引き締めサイクルのピークに達しているか、あるいはそれに近い水準にあると考えていますが、パンデミック以降、経済はさまざまな点で予測者を驚かせており、インフレ目標2%に向けた道のりはは確実ではありません。適切であれば、さらに政策を引き締める用意があります」と慎重な発言に終始し、2024年中に予想されている利下げ開始の具体的な時期についての言及はありませんでした。また、今後の米国経済の見通しとして、「今年のGDP成長率の評価を上方修正しましたが、経済は今後冷え込むと予想しており、来年の予測中央値は1.4%に低下しました」と述べました。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2023年12月17日

 インフレ率は高水準から低下し、失業率も大幅に上昇しませんでした。これは非常に良いニュースです。しかし、インフレ率はまだ高すぎ、インフレ率の継続的な低下も確実ではなく、先行きは不透明です。物価安定の回復は、すべての人に恩恵をもたらす力強い労働市場環境を持続的に実現するために不可欠です。

 昨年の年初以来、FOMCは大幅な金融引き締め政策を実施してきました。政策金利を5.25%引き上げ、保有有価証券の削減を急ピッチで続けてきました。このことは、金融引き締め政策が経済活動とインフレに下方圧力をかけていることを意味します。

 本日、私たちは政策金利を据え置き、保有有価証券の削減を継続することを決定しました。当委員会は、これまでの経過と直面する不確実性やリスクを考慮し、慎重に対応しています。追加的な政策引き締めの程度や、いつまで引締め状態を維持するかについては、今後発表されるデータ、見通し、リスクのバランスを総合的に判断して決定していきます。

 最近の経済指標は、経済活動の伸びが第3四半期に見られた大きなペースから大幅に減速したことを示唆しています。それでも、GDPは旺盛な消費者需要と供給環境の改善に支えられ、通年で2.5%成長しました。夏にやや持ち直した住宅セクターの活動は横ばいとなり、住宅ローン金利の上昇が主因となり1年前の水準を大きく下回っています。金利上昇は企業の固定投資にも重くのしかかっているようです。当委員会の経済予測サマリーで当委員会の参加メンバーは、今年のGDP成長率の評価を上方修正しましたが、経済は今後冷え込むと予想しており、来年の予測中央値は1.4%に低下しました。

 労働市場は依然タイトですが、需給バランスは引き続き良好です。過去3カ月間の雇用者数の増加は月平均20万4000人で、今年年初を下回るペースとなっています。失業率は3.7%と依然として低水準。力強い雇用創出は労働者供給の増加を伴っています。労働力率は昨年から上昇し、特に25歳から54歳の年齢層で上昇し、移民は大流行前の水準に戻りました。名目賃金の伸びは緩やかになり、求人数は減少しています。雇用と労働者の格差は縮小しているものの、労働需要は依然として供給力を上回っています。FOMC参加メンバーは、労働市場のリバランシングが続くことでインフレ上昇圧力が緩和されると予想しています。

 インフレ率は過去1年間で低下しましたが、長期目標である2%を依然上回っています。11月までの12カ月間にPCE物価指数は2.6%上昇し、変動の激しい食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコアPCE物価指数は3.1%上昇したと推定されます。過去数カ月間のインフレ率の低下は歓迎すべきことですが、インフレ率が私たちの目標に向かって持続的に低下していることを確信するには、さらなる証拠が必要です。長期的なインフレ期待は、家計、企業、予測担当者を対象とした広範な調査や金融市場の指標に反映されているように、依然として十分に定着しているようです。参加メンバーによる経済見通しから明らかなように、インフレ率が2%に至るプロセスには時間がかかると予想しています。

 昨年初め以来、私たちは政策金利を5.25ポイント引き上げ、証券保有残高を1兆ドル以上減らしました。私たちの金融引締め政策は、経済活動とインフレに下押し圧力をかけています。本日の会合では、フェデラル・ファンド金利の目標レンジを5.25~5.50に維持し、保有有価証券を大幅に削減するプロセスを継続することを決定しました。私たちは、政策金利がこの引き締めサイクルのピークに達しているか、あるいはそれに近い水準にあると考えていますが、パンデミック以降、経済はさまざまな点で予測者を驚かせており、インフレ目標2%に向けた道のりはは確実ではありません。適切であれば、さらに政策を引き締める用意があります。

 参加メンバーは、金利をさらに引き上げることが適切である可能性は高くないと考えていますが、その可能性をテーブル上から排除することも望んでいません。米国経済が予測通りに進展した場合、適切なFF金利の水準は2024年末に4.6%、2025年末に3.6%、2026年末に2.9%となっています。これらの予測は当委員会の決定や計画ではありません。経済が予測通りに進展しない場合、金融政策として最大限の雇用と物価安定の目標を促進するために適宜調整されます。

 不確実性とリスク、そしてこれまでの道のりを考慮し、当委員会の金融政策は慎重に進められています。私たちは引き続き、会合ごとに入ってくるデータの全体像とそれらが経済活動とインフレに関する見通しおよび、リスクバランスに与える影響に基づいて、意思決定を行っていきます。インフレ率を長期的に2%に戻すために適切と思われる追加的な金融政策引き締めの程度を決定する際、当委員会は、金融政策の引き締めの累積、金融政策が経済活動やインフレ率に影響を与えるラグ、および経済・金融情勢を考慮します。

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■関連情報(外部サイト)
FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)