インフレは受け入れられないほど高いまま=FOMC議事録 2023年02月23日 10時55分

[ゴールデンチャート社] 2023年2月23日

 2月22日、米連邦準備理事会(FRB)は1月31日、2月1日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公開しました。FOMCは今回の会合で0.25%の利上げを決定するにあたり、インフレは短期的には低下傾向にあることを認めつつも、長期的には2%を大きく上回っているため今後も継続的な利上げが適切であるとの認識で一致しました。インフレ目標である2%への低下の道筋が確認されるまでには時間がかかると予想されています。

FOMC議事録(要旨) 

■米国経済の現状と見通しに関する議論

  • 最近の経済指標は消費と生産の緩やかな伸びを示している。しかし、ここ数カ月、雇用は堅調に推移し、失業率も低水準にとどまっている。インフレ率はやや緩やかになったが、依然として高止まりしている。ロシアの対ウクライナ戦争が甚大な人的・経済的困難を引き起こし、世界的な不確実性を高める一因となっていることを認識、こうした背景から、参加メンバーはインフレリスクに強い関心を示した。
  • これまで積み上げてきた金融引締め政策が、最も金利感応度の高いセクター、特に住宅への需要を減退させた。参加メンバーは、2002年の経済活動の伸びが長期トレンドを下回り、2023年の実質GDP成長率がさらに鈍化すると予想した。2022年後半に実質GDPの伸びが回復したものの、第4四半期には伸びはほぼ停止したことを指摘する参加メンバーも複数いた。インフレが許容できないほど高い水準にある中で、参加メンバーは総需要と総供給のバランスを改善しインフレ圧力を軽減するには、実質GDPの成長率がトレンドを下回る時期が必要であると予想した。
  • 家計部門に関しては、過去1年間の金融引き締めの一部が反映され、11月と12月に実質消費支出が減少したことを確認し、2023年の消費は控えめな速度で成長する可能性が高いと予想した。
  • 企業部門については、第4四半期の企業の設備投資支出の伸びが鈍化し、これまでの金利引き上げによって抑制されたものであるとの見解が示された。一部のセクターではサプライチェーンの問題が残っているものの、供給のボトルネックは緩和されつつあるとのコメントが多数あった。中国のCOVID関連規制の緩和やユーロ圏の経済活動の予想以上の伸びが、米国の最終需要の下支えとなる可能性があるとのコメントもあった。
  • 参加メンバーは、労働市場が依然として非常にタイトであり、労働需要が採用可能な労働者の供給を大幅に上回っていることで一致した。失業率が12月に歴史的な低水準に達したこと、求人倍率が依然として高いこと、賃金の伸びが引き続き高いことが指摘された。
  • インフレ率は当委員会の長期目標である2%をはるかに超えており、参加メンバーはインフレが受け入れがたいほど高いという点で一致した。多くの参加メンバーは、インフレ率上昇は特に低所得者層にとって影響を受けやすい、とコメントした。参加メンバーは、過去3カ月のインフレデータが毎月の物価上昇ペースの低下を示していることを歓迎しつつも、インフレが持続的な低下傾向にあると確信するには、物価の低下がより広範囲に進展していることを示す実質的な証拠が必要であることを強調した。供給のボトルネックが緩和されたため、コア商品の価格が過去数カ月間で著しく下落したことを注視し、供給のボトルネック解消による物価への下落圧力が弱まるにつれ、これに関連した構成要素の価格下落は解消されると予想した。参加メンバーは、住宅サービスのインフレは今年後半に低下し始める可能性が高いと判断した。
  • 参加者メンバーは、経済活動、労働市場、インフレに関する見通しにおいて不確実性が高いことに留意している。インフレ率の上方リスクについて、例えば労働市場の逼迫が予想より長く続くことにより、物価上昇圧力が予想以上に持続する可能性など、様々な要因が指摘された。また、中国のゼロ・コロナ政策の緩和やロシアの対ウクライナ戦争の継続など、海外要因によるインフレ見通しの上振れリスクも多く挙げられたが、数名の参加メンバーは、インフレ見通しに対するリスクはバランスよくなっていると述べた。経済活動の見通しに関するリスクは下方傾向にあるとの見方で一致した。

■金融政策決定に関する議論

  • 参加メンバーは、当委員会は過去1年間に金融引締め政策のスタンスが大きく進展を遂げたことに同意した。しかしながら、当委員会による金融引締め政策の累積効果がインフレ圧力を緩やかにし始めた最近の兆候がある一方で、インフレ率は当委員会の長期目標である2%を大幅に上回っており、労働市場は依然として非常にタイトであり、賃金と物価に対する上昇圧力に寄与し続けていることに合意した。このような背景の下、金融政策が経済活動やインフレに影響を与えるタイムラグを考慮し、ほぼ全ての参加メンバーは、今回の会合でフェデラルファンド金利の目標レンジを25bp引き上げることが適切であることに合意した。これらの参加者の多くは、利上げペースをさらに減速させることで、「最大雇用」と物価安定という当委員会の目標に向けた経済の進展を評価し、これらの目標を達成するためには、今回の引締め政策が将来の引締め政策の程度を判断するのに適しているとの考えを示した。一部の参加メンバーは、今回の会合でフェデラルファンド金利の目標レンジを50bp引き上げることに賛成、あるいはその程度の引き上げを支持する可能性に言及した。全ての参加メンバーメンバーは、先に発表された「連邦準備制度のバランスシート縮小計画」で説明されているように、連邦準備制度の証券保有高を減らすプロセスを継続することが適切であることに合意した。
  • インフレ率が委員会の目標である2%を依然大きく上回り、労働市場が非常にタイトであることから、全ての参加メンバーは、当委員会の目的を達成するためには、フェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切であると予想した。インフレ率を当委員会の目標値である2%に戻すことへの強いコミットメントを確認した。将来の目標レンジの引き上げ幅を決定するにあたり、参加メンバーは、金融政策の累積的な引き締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与えるタイムラグ、経済・金融情勢を考慮する必要があると判断した。インフレ率が2%への持続的な低下傾向にあるとの確信が得られるデータが出てくるまで、金融引締め政策スタンスを維持する必要があるとの見解を示したが、それには時間がかかりそうであった。

(H・N)

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■関連情報(外部サイト)
FOMC議事録(原文、FRB)