金融引締め政策を維持=パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ 2023年02月02日 10時24分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は2月1日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、「米国のインフレ率は最近緩やかになってきているが、依然高すぎる。インフレが持続的に低下していると確信するためには、さらに多くの証拠が必要。利上げの効果が米国経済全般に発揮されたことが確認されるまでにはなお時間がかかる見込み。今後も継続的な利上げが適切と考える」と、従来の政策スタンスを維持しました。今後の利上げ幅については、「米国経済の進展を見ながら、経済活動やインフレの見通しに与える影響を勘案して会合毎に判断決定していく」と明言を避けました。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2023年2月2日

  • この1年間、私たちは金融引き締めを強力に推し進めましたが、その効果はまだ現れていません。それでも、私たちにはまだやるべきことがあります。物価の安定はFRBの責務であり、経済の基盤です。物価の安定なくして、経済は誰のためにも機能しません。物特に、価の安定がなければ、全ての人に恩恵をもたらす労働市場の状況を持続的に実現することはできません。
  • インフレ率を長期的に2%に戻すのための金融政策を実現するためには、継続的な利上げが適切であると考えています。また、バランスシートの規模を大幅に縮小するプロセスを継続しています。物価の安定を取り戻すには、しばらくの間、引締めスタンスを維持する必要がありそうです。
  •  昨年の米国経済は大幅に減速し、実質GDPはトレンドを下回る1%台の上昇にとどまりました。最近の経済指標から今期の消費と生産は小幅な伸びにとどまると見られています。
  • 個人消費は、過去1年間の金融情勢を反映して、控えめなペースで拡大しているようです。住宅部門の活動は、主に住宅ローン金利の上昇を反映して弱含みで推移しています。金利の上昇と生産高の伸びの鈍化も、企業の設備投資には重荷になっているようです。
  • 経済 成長率の鈍化にもかかわらず、労働市場は極めてタイトであり、失業率は50年ぶりの低水準にあり、求人倍率は依然として非常に高く、賃金上昇率も高水準にあります。雇用の増加は堅調で、過去3カ月間で月平均24万7000人増加しました。雇用増加のペースは過去1年間で鈍化し、名目賃金の伸びもいくらか緩和の兆しを見せていますが、労働市場は依然として堅調です。労働需要は労働力の供給を大幅に上回っており、労働市場はは依然として均衡を欠いています。労働力率も前年同期からほとんど変化していません。
  • インフレ率は、長期的な目標である2%を大幅に上回っています。昨年12月までの12カ月間で、PCE物価総合指数は5.0%上昇、コアPCE物価指数は4.4%上昇しました。過去3カ月のインフレデータでは毎月の上昇ペースが減少していることが確認されています。最近の動向は心強いものですが、インフレが持続的に低下していると確信するためには、さらに多くの証拠が必要でしょう。インフレ率は依然として高すぎます。現在の高インフレが長引けば長引くほど、インフレ期待が定着する可能性が高くなるでしょう。高インフレは、特に、食料、住宅、交通などの必需品のコスト上昇に対応できない人々にとっては、購買力が低下し、大きな苦難を強いることになることを痛感してるます。
  • 本日の会合で、当委員会はフェデラルファンド金利の目標レンジを25bp 引き上げ、目標レンジは4.50 から4.75%となりました。私たちはバランスシートの規模を大幅に縮小するプロセスを継続しています。インフレ率を2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを実現させるためには、フェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切であると考えています。特に住宅など、最も金利の影響を受けやすいセクターの需要に私たちの金融政策の効果が現れています。しかし、金融引締めの効果が完全に発揮されるには時間がかかるでしょう。金融政策の引き締めの累積と、金融政策が経済活動やインフレに影響を与えるタイムラグを考慮し、当委員会は利上げを決定しました。
  • 将来の金利引き上げ幅の決定については、当委員会の目標とする経済の進展を評価しながら、経済活動やインフレの見通しに与える影響を総合的に勘案し、会合ごとに判断していきます。私たちは、需要が供給とより良く調和するように、需要を抑制するための強力な手段を講じてきました。長期的なインフレ期待を安定させることに重点を置いています。インフレ率の低下にはトレンドを下回る成長率と労働市場の軟化が必要となることがあります。物価の安定を取り戻すことは、長期的な「最大雇用」と物価の安定を実現するための布石として不可欠であり。歴史的は、早まった政策緩和を強く戒めています。私たちは、仕事が完了するまで、その方針を維持していきます。

[ゴールデンチャート社]

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■関連情報(外部サイト)

FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)