予想を上回るCPI変動率を懸念=FOMC議事録 2022年07月07日 10時13分
[ゴールデンチャート社] 2022年7月7日
7月6日、米連邦準備理事会(FRB)は、6月14日、15日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公開しました。
今回の会合では、フェデラルファンド金利を75bp引き上げる決定をしました。今回の大幅な利上げ決定の背景には、5月の消費者物価指数(CPI)の変動率が予想を上回り、依然としてインフレ圧力が弱まる兆候がないことへの懸念があったことが議事録から推察されます。今回FOMCメンバーが提示した経済見通しでは、米国のGDP成長率が大幅に下方修正されています。参加メンバーから「今後数年間の経済成長に関する不確実性が高まっている」、「金融引き締めが予想以上に経済活動に悪影響を及ぼす可能性」などネガティブな発言が目立ってきています。参加メンバーは、今回の経済見通しが、金融政策を引き締め的なスタンスへの移行を正当化するという考え方に同意しています。
FOMCは、フェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切であり、7月下旬のFOMCでは、「50または75bpの引き上げが適切であろう」と判断しています。
FOMC議事録要旨
■米国経済の現状と見通し
- 米国の経済活動は第1四半期に小幅に低下した後、持ち直したように見える。雇用の増加はここ数カ月間は堅調であり、失業率は低水準に留まっている。インフレ率は、パンデミックに関連した需給の不均衡、エネルギー価格の上昇および、より広範な物価上昇圧力を反映して高止まりしている。ロシアによるウクライナ侵攻がウクライナ国民に多大な人的・経済的苦難を与えていると同時に、それに関連する出来事がインフレにさらなる上昇圧力を与え、世界の経済活動に重荷を与えていると判断している。また、中国におけるCOVID関連のロックダウンは、サプライチェーンの混乱をさらに悪化させる可能性がある。
- 最近の経済指標から、当四半期の実質GDP成長率は拡大傾向にあり、消費支出は堅調に推移している。しかし、企業の固定投資の伸びは鈍化しており、住宅ローン金利の急上昇の影響もあって住宅セクターの動きも軟化している。これらを反映して、当委員の参加メンバーは今年の実質GDP成長率の見通しを下方修正した。
- 広範な製品市場における需給の不均衡がインフレ上昇圧力に寄与している。金融政策の適切な引き締めとそれに伴う金融引き締めが、この不均衡に対処し、最大雇用と物価安定という連邦準備制度(FRB)の目標を支える上で、中心的な役割を果たすと考えている。供給のボトルネックの緩和、労働力人口のさらなる増加、パンデミック関連の財政政策支援の効果が薄れることも、経済における需給の不均衡を緩和し、今後数年間にインフレ率を低下させる要因として挙げられている。とはいえ、こうした効果の強さやタイミングは不透明である。参加メンバーは、供給制約が大幅に改善したことを示す証拠はこれまでほとんどないと見ており、一部の参加メンバーは、こうした制約による経済的影響がこれまでの予想よりも長く続く可能性があると判断している。参加メンバーは、これらの要因やその他の要因の進展に関する情報が入ってくれば、政策スタンスを調整する必要性を強調した。
- 家計部門の強いバランスシートと厳しい労働市場を一部反映して、消費支出は堅調に推移している。しかしながら、住宅ローン金利の上昇が住宅販売のさらなる減少につながると予想しており、数人の参加メンバーは、住宅販売が顕著に減速し始めたと指摘した。借入コストの上昇、ガソリンや食料品の価格上昇を背景に、数名の参加メンバーは、ミシガン州調査の速報値で、6月の消費者心理が著しく低下したとコメントした。
- 企業部門では、売上が減速し始め、先行きについて楽観的でなくなっているとの指摘があった一方で、概して売上は好調に推移しているとのコメントもあった。多くの産業で、企業の需要を満たす能力が、労働力不足とサプライチェーンのボトルネックによって制限され続けている。国際的な供給源に依存する企業は、特に深刻なサプライチェーンの混乱に遭遇していると見られる。
- 労働市場は非常にタイトである。50年来の低水準に近い失業率、歴史的な高水準の求人倍率、高い名目賃金の伸びなどがあげられる。労働市場は当面タイトな状況が続くとみられるが、時間の経過とともに労働需給のバランスがとれ、賃金や物価への上昇圧力が緩和されると予想している。金融政策の適切な強化が労働市場の不均衡を解消する上で中心的な役割を果たすと想定される。
- インフレが依然として高すぎることに留意し、4月までの12ヵ月間にPCE総合指数が6.3%上昇し、当委員会の長期的な目標である2%を大幅に上回って推移している。また、5月の消費者物価指数(CPI)の12ヵ月変動率が予想を上回ったことも確認した。参加メンバーは、5月の消費者物価指数の発表値がインフレ圧力がまだ弱まる兆しを見せていないことを懸念し、多くの参加メンバーは、インフレが以前予想よりも長期化するとの見方を固めたようだ。
- 強い総需要と予想以上の供給制約の長期化が、広範な財・サービスにわたる物価上昇圧力に引き続き寄与していると判断している。ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油やその他の商品価格の高騰が、ガソリンや食料品の価格を押し上げ、インフレにさらなる上昇圧力を与えていることに注目している。
■金融政策の基本的スタンス
- 参加メンバーはインフレに対するリスクは上方に偏っていることに同意し、進行中の供給のボトルネックやエネルギーおよび商品価格の上昇に関連するリスクが挙げている。今後数年間の経済成長に関する不確実性が高まっていると判断した。何人かの参加メンバーは、GDPと国内総所得について最近、経済成長のペースに相反するシグナルを出しており、経済の基本的な勢いを判断することを困難にしていると指摘した。ほとんどの参加メンバーは、経済成長の見通しに対するリスクは下方に偏っているとし、ダウンサイドリスクには、金融引き締めが予想以上に経済活動に悪影響を及ぼす可能性や、ロシアのウクライナ侵攻や中国でのCOVID関連のロックダウンが予想以上に経済成長に影響を及ぼす可能性などが含まれている。
- 当委員会の目的を達成するために、フェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切であると判断している。次回会合で50または75bpの引き上げが適切であろうと判断した。参加メンバーは、今回の経済見通しが、金融政策を引き締め的なスタンスへの移行を正当化するという考え方に同意し、高いインフレ圧力が持続する場合には、さらなる引き締めの制限スタンスが適切となる可能性を認識した。
(H・N)
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