今後数回50bpの利上げが適切、インフレ抑制に注力=FOMC議事録 2022年05月26日 10時25分

[ゴールデンチャート社]2022年5月26日

 5月25日、米連邦準備理事会(FRB)は、5月3日、4日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公開しました。今回の会合では、フェデラルファンド金利の50bp利上げおよび、バランスシートの縮小開始を6月1日とする決定をしました。

 FRBは2%のインフレ目標を達成するために、フェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが正当化されると想定、今後数回の会合で目標レンジを50bp引き上げることが適切であろうとの見解を示しました。

 米国経済の見通しは極めて不確実であり、FRBの金融政策は2%のインフレ率目標に戻すことに焦点を当てるべきであるとし、インフレ動向とインフレ期待を引き続き注意深く監視していく必要があるとの見解を示しました。また、ロシアのウクライナ侵攻に関連する動きや中国のコロナ感染関連のロックダウンは、世界のサプライチェーンを混乱させ、米国の企業や消費者が支払う価格にさらなる上昇圧力を加える可能性があり、経済見通しの下振れリスクも指摘されました。

FOMC議事録要旨

米国経済の現状認識と経済見通し

  • 米国経済は、第1四半期に経済活動全体が小幅に縮小したものの、家計消費と企業の設備投は好調さを維持している。雇用はここ数カ月間、堅調に推移し、失業率は大幅に低下した。インフレ率は、需給の不均衡が継続、エネルギー価格の上昇、より広範な物価上昇圧力を反映して高止まりしている。
  • ロシアによるウクライナへの侵攻とその関連事象は、インフレにさらなる上昇圧力をかけ、経済活動の重荷になる可能性が高い。また、中国におけるコロナ感染関連のロックダウンは、サプライチェーンの混乱を悪化させる可能性が高い。このような背景から、当委員会メンバーはインフレリスクに高い関心を寄せていると述べた。
  • 今年のGDPは2021年よりも緩やかに拡大し、今年の成長率は長期的な速度に近いかそれを上回る可能性が高く、総需要と総供給の間の不均衡は時間とともに弱まると予想している。参加メンバーは、金融政策の適切な引き締めが、この不均衡に対処し、最大限の雇用と物価安定というFRBが掲げる目標を支える上で、中心的な役割を果たすと考えている。
  •  家計部門の消費支出は堅調に推移するとの見通しが示された。この見通しを支える要素として、家計のバランスシートの強さ、幅広い雇用の確保、新たなコロナ感染の波に直面したときの米国経済の回復力などが指摘された。
  • 企業の生産は、労働力不足やサプライチェーンのボトルネックによってなお抑制されている。一部の参加メンバーは、取引先から供給制約の緩和が報告されていると指摘したものの、全体として供給制約は依然として大きく、解決には時間がかかりそうだと予想している。また、ロシアによるウクライナ侵攻や中国でのコロナ感染関連のロックダウンは、サプライチェーンの混乱を悪化させる可能性があると見られている。
  • 経済活動の多くの部分で労働需要が供給を上回っており、ビジネス関係者は労働者の雇用と維持が困難であると報告している。雇用は力強いペースで増え続け、失業率は50年ぶりの低水準まで低下し、退職者数と求人数は極めて高い水準にあり、名目賃金は急速に上昇を続けている。
  • 高インフレは持続的な最大雇用の達成を阻害する可能性があると指摘された。ロシアのウクライナ侵攻に関連する動きが短期的なインフレ圧力に拍車をかけ、中国のコロナ感染関連のロックダウンは世界のサプライチェーンを混乱させ、エネルギーや商品価格の高騰など、米国の企業や消費者が支払う価格にさらなる上昇圧力を加える可能性がある。賃金や資材価格の大幅な上昇が、顧客価格の上昇に転嫁されていると、ビジネス関係者から報告を受けている。また、物価の上昇が販売に打撃を与えていると報告もある。
  • インフレ動向とインフレ期待を引き続き注意深く監視していく必要がある。実体経済に対する不確実性が高まっている。ロシアの侵攻や中国でのコロナ感染に関連したロックダウンのリスク、エネルギーや商品価格の長期的な上昇の可能性など、さまざまな経済見通しの下振れリスクを指摘された。

金融政策の基本的スタンス

  • 金融政策の適切なスタンスを検討するにあたり、全ての参加メンバーは、米国経済が非常に好調で、労働市場は極めてタイトであり、インフレ率は非常に高く、当委員会のインフレ目標である2%を大幅に上回っていることに同意した。このような背景から、全ての参加メンバーは、今回の会合でフェデラルファンド金利の目標レンジを50ベーシスポイント引き上げることが適切であることに合意した。さらに、当委員会の目標を達成するためには、フェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが正当化されると想定した。また、会合後の声明文と併せて公表される「FRBのバランスシート縮小のための計画」で説明されているように、6月1日にFRBのバランスシートの縮小を開始することが適切であることに同意した。
  • 当委員会がフェデラルファンド金利の目標レンジの引き上げとFRBのバランスシートの縮小の双方を通じて、金融政策のスタンスをニュートラルな姿勢に早急に移行させるべきことに合意した。多くの参加メンバーは、今後数回の会合で目標レンジを50bp引き上げることが適切であろうと判断した。
  • 多くの参加者が、バランスシートの縮小が進んだ後、財務省証券を中心とした長期的なSOMAポートフォリオ(連邦公開市場操作を通じて取得した証券資産を管理する口座)への移行を適切に進めるため、当委員会が政府系不動産担保証券の売却を検討することが適切であると指摘した。
  • 参加メンバーは、経済見通しは極めて不確実であり、政策決定はデータに依存し、強い労働市場の状況を維持しながらインフレ率を当委員会の目標である2%に戻すことに焦点を当てるべきであることに同意した。現時点では、よりニュートラルな金融政策スタンスに迅速に移行することが重要であると判断した。

(H・N)

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■関連情報(外部サイト)

FOMC議事録(原文、FRB)