【2024年6月13日~14日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2024年06月24日 15時22分

金融政策決定会合における主な意見(2024年6月24日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。
  • 今回は弱めのデータや懸念される情報もあったが、きわめて高水準の企業収益と約30年ぶりの水準となった春季労使交渉の結果が所得面から好循環メカニズムを支える、とのメインシナリオは不変である。物価面の指標もオントラックであった。
  • 日常の買い物やセンチメントには物価高の影響がみられ、個人消費は強さに欠ける。賃上げや政府の施策が今後どの程度個人消費を押し上げるか注視していく必要がある。
  • 当面、中小企業の正規雇用や年金受給者については、賃金や受給額の増加が物価上昇に追いつかない可能性がある一方、非正規雇用や大企業の正規雇用については物価上昇以上の賃金上昇が期待できる。こうした賃金動向が個人消費の先行きに及ぼす影響を注意してみていく必要がある。
  • 消費者マインドが低下してきているが、それは、物価の上振れリスクの高まりによるものである。
  • 中小企業の収益力はコロナ前より大幅改善した大・中堅企業に比べ弱く、投資も低調で賃上げ率も低い。少子高齢化等の構造的問題を抱え国際競争力が低下している日本で、賃金と物価の好循環を実現するには、成長志向の中小・中堅企業が投資・事業構造強化を進め、スタートアップが躍進し、資金・人材を集め成長スパイラルを創出する必要がある。

(2)物価

  • 消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
  • 賃金と物価の好循環が実現しつつあるが、名目賃金上昇率、予想インフレ率、サービス価格上昇率などを踏まえると、基調的な物価上昇率はまだ2%に届いていない。
  • 本年の春季労使交渉の結果が賃金統計に十分に反映されているとは未だ言い難いが、企業物価指数や企業向けサービス価格指数の上昇を見る限り、「物価安定の目標」に向けて着実に進んでいる。
  • 物価は4月の展望レポート時の見通しに沿って推移している。先行きも、輸入物価上昇に加え、タイトな労働需給や所謂2024年問題による運送費高が影響し、価格上昇が続くと考えられる。
  • 為替円安に伴う物価上昇のもとでも賃金と物価の好循環が着実に強まっていくためには、中小企業の価格転嫁が進展するとともに、名目賃金上昇率が一段と高まっていくことが重要である。
  • 輸入物価上昇は、現時点で、2022年以降のような価格転嫁をもたらすとは考え難いが、価格を据え置くとするノルムの転換もあり、従前より価格転嫁が進みやすく、2024年後半に向けて価格引き上げの波が再び生じる可能性もある。

2.金融政策運営に関する意見

  • 展望レポートで示した経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになる。
  • 見通しに沿った物価の推移が続く中、コストプッシュを背景とする第2ラウンドの価格転嫁によって物価が上振れる可能性もあるだけに、リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要である。
  • 来年度後半の2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、オントラックで進んでいるが、上振れリスクも出てきている。こうした点が消費者マインドに影響していることも意識しつつ、次
  • 回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要である。
  • 政策金利の変更を考えるタイミングは、消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想インフレ率の上振れなどを経済指標で確認してからで良いと考えられる。
  • 個人消費が盛り上がりを欠く中、一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続き、これらの影響も確認する必要がある。このため、当面は現在の金融緩和継続が適当である。
  • 円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、リスク中立的な、適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべきである。
  • 為替相場の変動は経済活動に幅広い影響があるほか、ファンダメンタルズから乖離した水準が続けば国民経済の健全な発展にも影響が及ぶ。他方、金融政策も為替相場だけではなく国民生活や経済活動の幅広い側面に影響するので、経済・物価情勢の全体像をみて運営しなければならない。
  • 金融政策運営は、物価の基調とその背後にある賃金動向を見極めて行うものであり、為替の短期的な変動には左右されない。
  • 金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、国債買入れを減額していくべきである。その際、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で相応の規模の減額をしていくことが適切である。
  • イールドカーブ・コントロールからの出口を円滑に行うことができた経験も踏まえて、国債買入れの削減についても、削減額やペースのほか、枠組みの作り方などを工夫することで、市場
  • の混乱を起こすことなく削減を行うことができると考えている。今回具体案を決めるより、市場参加者の見方を確認するプロセスを踏んだ方が、よりしっかりとした規模の削減ができる。
  • 3月の政策枠組み見直しの趣旨を踏まえ、国債買入れの減額を行うことで、市場における日本銀行のプレゼンスを小さくしていくことが必要である。
  • ①国債市場で日本銀行が圧倒的に大きなプレーヤーである、②市中での代替が簡単ではないほど、日本銀行が大量の国債を保有している、といった大規模緩和の副作用が課題として残っている。このため、市場と対話しながら、適時適切に、日本銀行バランスシートの正常化を進めていく必要がある。
  • 国債の買入れ額の減額については、債券市場の需給や機能度の改善状況を踏まえつつ、中期的な計画を策定して、これに沿って淡々と減額を行うことが望ましいが、減額の最適なペースな
  • どを設定する必要があるため、市場との対話も含め、ある程度の時間をかけて慎重に検討すべきである。
  • 国債買入れの減額については、開始時期や規模次第で経済を下押しし得るため、市場と対話を図りつつ、経済情勢を点検してから徐々に進めることが必要である。
  • バランスシートの縮小は、拡大した日本銀行の市場への関与を市場への攪乱的影響を避けつつ減らしていくことが目的であり、金融政策とは切り離して行うものである。
  • 国債買入れの減額に際し、今後の国債保有構造の在り方を念頭に、中長期的観点から新たな市場構造を議論していく必要がある。その際には、市場参加者を取り巻く前提となる環境を含め、幅広く議論していくことが重要である。
  • 保有するETFの取扱いを議論していくために、それが個別株式でなく投資信託であることなど、市場に影響を与える諸特性について理解を深めることが必要である。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 足もとでは賃上げ、設備投資等に前向きな動きが見られる一方、個人消費は力強さを欠いており、海外経済のリスクも認識している。
  • 政府は、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させていく。
  • 日本銀行には、政府との密接な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。その上で、情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい。

(2)内閣府

  • 足もとの経済運営に万全を期しつつ、コストカット型から成長型経済への移行に向け、強い決意で改革に取り組む。「経済・財政新生計画」を策定し、政府を挙げて実行する。
  • 日本銀行には、金融政策の具体的なオペレーションについて適切な判断を期待する。引き続き、政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的実現に向け、適切な金融政策運営を行うことを期待する。

以上


[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2024年6月13日、14日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)