【2022年1月17日~18日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2022年01月26日 09時02分

金融政策決定会合における主な意見(2022年1月26日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国の景気は、持ち直しが明確化している。先行きは、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。
  • わが国経済は、緩やかな回復が続くとみられる。2022年度は、政府の経済対策の効果にも支えられて、潜在成長率を大きく上回る成長となる可能性が高い。
  • オミクロン株による感染が拡がる中、感染症対策と経済活動の両立の維持が今後どのように図られ、そのもとで消費者心理がどのように変化していくか、注視する必要がある。
  • まん延防止等重点措置の適用地域が増える見込みの中、自主的な行動制限の動きがある程度拡がることは避け難く、実質GDPが感染症拡大前の水準に復する時期は幾分後ずれする可能性がある。
  • オミクロン株の感染拡大に伴い、わが国経済の先行き見通しに関する不確実性は高まっている。
  • わが国経済は持ち直しが明確化しているが、中国の感染拡大と公衆衛生上の措置が、海外需要の下押しと供給制約の悪化を通じて、わが国経済に悪影響を及ぼすリスクに注意が必要である。

(2)物価

  • 消費者物価の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられるものの、エネルギー価格などの上昇を反映して、小幅のプラスとなっている。また、予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。
  • 消費者物価の前年比は、需給ギャップが改善し、価格転嫁が進むもとで、振れを伴いつつも徐々に伸びを高めていくとみている。
  • 消費者物価の前年比は、エネルギー価格上昇の影響に加え、多くの企業が従前のデフレ下におけるビジネスモデルの限界を意識し、価格設定行動を変化させることで、物価上昇圧力が強まることが考えられるため、先行きは1%を上回る水準で推移すると予想する。
  • 企業の価格設定行動や予想インフレ率に変化がみられるものの、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、2023年度末に「物価安定の目標」を達成するのは難しい。
  • 物価見通しに関するリスクは、概ね上下にバランスしている。企業の価格設定スタンスを巡っては、値上げによる売上減少への懸念から、企業がコストの上昇をマージンで吸収する下振れリスクがある一方、個人消費の回復が値上げに対しても頑健とみられる場合には、企業がコスト転嫁を加速させる上振れリスクもある。
  • 本年4月以降、携帯電話通信料の引き下げ要因が剥落し、それに諸要素が重なれば、消費者物価の前年比は瞬間風速的に2%に近い水準まで上昇する可能性がある。その際には、物価上昇の背後にある要因や、それが持続する力が備わっているかが重要である。
  • 消費者物価は、2022年前半に一時的に1%台半ばに到達する可能性はあるが、その後もモメンタムが維持されて2%の「物価安定の目標」に近づき安定的に推移するかは、賃金上昇率と中長期インフレ予想の動向、つまるところ需要の強さによる。
  • 来年度以降の物価上昇が、硬直的とされるサービス価格にも拡がっていくのか、さらには、賃金や所得の上昇を伴った持続的なものとなっていくのか、といった観点から、物価の基調をしっかりと見極めていくことが重要である。
  • 消費者物価の基調を判断するうえでは、賃金の動向が鍵である。消費者物価が基調的に上昇していくためには、賃金の上昇を伴ってサービス価格が上昇していくことが必要である。
  • 高い伸びが続く企業物価上昇の一定程度は消費者物価に転嫁されていくと考えられる中、賃上げに向けた政府の諸施策も踏まえ、適合的期待形成を通じて人々の中長期的な予想インフレ率の上昇や値上げ許容度の改善が実現していくか、注目している。
  • 原材料コスト上昇の価格転嫁の状況や家計の値上げ許容度に影響する賃金・雇用の状況の変化を注視している。
  • 物価の現状判断では、消費者物価の基調的な変化に加え、GDPデフレーターや雇用・所得動向など幅広い指標を踏まえる必要がある。
  • 欧米と比べて賃金が上がりにくいわが国でも、需給ギャップが改善し、価格転嫁が可能な状況となれば、政府が賃上げを推進するもとで、賃金上昇率が高まっていくとみている。


2.金融政策運営に関する意見

  • オミクロン株による感染の急拡大により経済・物価の先行き不透明感が高まっている中、当面は企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に引き続き万全を期していく必要があり、現在の金融緩和を継続していくことが妥当である。
  • 当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるべきである。オーバーシュート型コミットメントや政策金利のフォワードガイダンスについても、従来の方針を継続することが適当である。
  • 金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。
  • 未だ経済活動の一部で感染症の影響が続いていること等を踏まえると、前回会合で決定した新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの一部延長の影響について確認していくべきである。
  • 2%の「物価安定の目標」の達成には、企業や家計の物価観の変容が必要であり、そのために現行の金融政策を粘り強く継続していくことが重要である。
  • わが国の中長期インフレ予想は、経済ショックに反応しないという意味でのアンカーはされていない。「物価安定の目標」の達成に向けて中長期インフレ予想をアンカーするには、実績値でみて2%のインフレの定着が確認されるまで緩和を行うのが最も確実であろう。
  • 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。
  • 安定的な2%の実現にはなお時間がかかる状況であるため、現行の強力な金融緩和の継続が適当との基本的な考え方に変わりはなく、軸をぶらさず、その方針をしっかりと情報発信していくことが重要である。
  • 「物価安定の目標」を安定的かつ持続的に達成するまで金融緩和を続けるという日本銀行の政策意図は、誤解がないように対外的によく伝えるべきである。
  • 消費者物価が2%の「物価安定の目標」を安定的に持続するまで金融緩和を続けることを、本行が考える望ましい物価上昇のあり方と合わせてしっかりと対外的に説明する必要がある。
  • 物価安定目標の実現には、企業による有形・無形資産投資の持続的な増加を通じた資金循環の拡大を伴う持続的な経済成長が必要であり、そのためには労働力や企業のダイナミズムと人的投資が活発化する必要がある。
  • 昨年12月の気候変動対応オペの結果は、中小企業を含めた気候変動対応投資が想定以上に進む可能性を示しており、企業の取り組み状況や投資計画を把握・分析すべきである。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 1月17日に、令和4年度予算を国会に提出した。感染症対策に万全を期しつつ、「成長と分配の好循環」による「新しい資本主義」の実現を図るとともに、骨太方針2021における予算編成の考え方に基づき、メリハリのついた予算としている。
  • 感染症の拡大防止や経済・財政運営に万全を期すべく、一日も早い予算成立に向けて取り組む。
  • 日本銀行には、政府との連携のもと、感染症対応を含め必要な措置を適切に講じることを期待する。

(2)内閣府

  • 感染症に対しては、予防、検査、早期治療の枠組みを一層強化し、ワクチンの3回目接種を前倒しするなど、経済社会活動を極力継続できる環境を作り、安全・安心を確保する。
  • 経済対策の迅速かつ着実な実行により、経済の底割れを防ぎ、「成長と分配の好循環」を実現し、経済を自律的な成長軌道に乗せていく。
  • 日本銀行においては、感染症の経済への影響等を十分注視しつつ、引き続き、適切な金融政策運営をお願いする。

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2022年1月17、18日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)