【2021年12月16日~17日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2021年12月27日 09時29分

金融政策決定会合における主な意見(2021年12月27日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。
  • 供給制約は未だに根強く残っているほか、変異株に関する不確実性はあるものの、公衆衛生措置が段階的に解除される中で、消費者マインドは改善しており、わが国経済の持ち直し基調は強まっている。
  • 世界経済は、新型コロナウイルスの変異株による感染症の拡大という不確実性は残るものの、現時点では需要が大幅に落ち込む兆候はみられない。
  • 先行きのわが国経済は、感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らいでいくもとで、回復していくとみられる。
  • 12月短観では、設備投資の増加計画が確認されたが、イノベーションに繋がる成長投資や多くの国内従業者が働く非製造業・中小企業による設備投資の計画に力強さがみられない。
  • 交易条件の悪化に加え、物流の混乱や供給制約の長期化も企業収益を押し下げ得る。こうした中で価格転嫁が十分に進まない場合、利益から資本や労働への分配が滞るリスクが高まる。
  • 政府において賃上げ促進に向けた検討がなされている中、感染症への警戒が継続するもとでも企業活動が活発化し、賃金と物価が大きなタイムラグを伴うことなくそれぞれ安定的に上昇することで、前向きな消費活動に結び付く好循環に繋がることが期待される。
  • わが国の企業が海外での地産地消を進めてきた結果、円安が企業業績や株価にもたらすプラスの効果は、かつてより小さくなってきている。
  • 世界経済のリスクとしては、変異株の拡大、米国でのインフレ動向と政策対応の影響、民間債務問題が懸念される中国の経済成長鈍化、地政学的リスクが挙げられる。
  • 人々が安心して経済活動を再開し、グローバル経済が安定的な成長軌道に復するためには、世界に広くワクチンが行き渡り、新たな変異株の出現リスクひいては感染・重症化を抑制していくことが極めて重要である。

(2)物価

  • 消費者物価の前年比は、0%程度となっているが、目先、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。
  • 原材料価格の上昇等を背景に企業物価が歴史的な伸びを続ける中、消費者物価についても、基調的な上昇圧力が徐々に高まってきているように窺われる。
  • 12月短観では、仕入価格と販売価格のギャップが拡大しているが、企業の物価見通しが上方修正されるなど、価格設定行動に変化の兆しが窺われる。
  • 予想インフレ率は中長期を含めて足もと上昇しており、物価上昇圧力は、先行き高まっていくと見込まれる。また、政府が賃上げの推進を行う中、来年以降の賃金上昇率が注目される。
  • 需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、2023年度末に「物価安定の目標」を達成するのは難しいが、企業の価格設定行動や予想インフレ率の変化には注目している。
  • 次回展望レポートでは、最近の予想物価上昇率や原材料コストの上昇などを踏まえ、物価は下振れリスクが大きいとの従来のリスク評価の妥当性を点検する必要がある。

2.金融政策運営に関する意見

  • 金融環境は、昨年春以降、全体として改善している。大企業では、CP・社債市場は良好な発行環境となっているほか、貸出市場でも予備的な流動性需要に落ち着きがみられる。中小企業の資金繰りは、総じてみれば改善傾向にあるが、対面型サービス業など一部には、なお厳しさが残っている。
  • 特別プログラムについては、CP・社債の発行環境が良好である一方、企業の資金繰りは一部業種や中小企業を中心になお厳しさが残っていることを踏まえると、CP・社債等増額買入れは期限どおり終了し、新型コロナ対応金融支援特別オペは期限を半年間延長することが適当である。
  • 特別プログラムのうち、CP・社債等の買入れについては、市場機能や年金・生保等の運用に与える影響にも配慮し、平常化することが適当である。コロナオペについては、中小企業向け貸出の多くの部分が、信用リスクが国に移転される実質無利子・無担保融資となっていることも踏まえ、金融機関へのインセンティブを引き下げることが妥当である。
  • 昨年春、新型コロナウイルス感染症が拡大した初期から足もとまでの金融環境の改善状況に鑑みると、特別プログラムの一部については所期の役割をおおよそ終えていると考える。
  • 中小企業の多い対面型サービスでは依然として厳しさが残っており、特別プログラムの中小企業の資金繰りに関する部分は延長することが適当である。
  • 緊急措置である特別プログラムは、資金繰りに不安を抱える中小企業向け支援に集中し、翌年の事業計画の検討を始める年内に延長を決定すべきである。
  • 変異株出現など感染動向を巡る不確実性は高い。今回会合で資金繰り支援の延長を決定し、早めに来年度以降の方針を明らかにすることで、中小企業や金融機関に安心感を与えられる。
  • コロナオペのうち、政府の支援にかかる制度融資分については、無利子・無担保融資の新規申込みが既に終了している点も踏まえ、インセンティブを見直し、バックファイナンス措置であることを明確にすべきである。
  • コロナオペのうち、大企業向けや住宅ローンが中心の民間債務担保分は、期限どおり終了しても問題ないと考えられる。
  • 特別プログラムの見直しに際しては、経済や物価に悪影響がないことやマネタリーベースの拡大方針との整合性を説明する必要がある。
  • 昨春以降のマネタリーベースの増加は、感染拡大による流動性需要の高まりに日本銀行が潤沢な資金供給で応えてきた結果である。今回の措置により短期的にマネタリーベースが減少しても、長期的な増加トレンドは維持されるため、オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しない。
  • 特別プログラムは、コロナ禍対応の政策であり、基本的にはコロナ禍が終われば手仕舞いさせるべきものである。特別プログラムを全て手仕舞いすることになったとしても、それはコロナ禍対応の終了であり、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとでの金融緩和の縮小を意味するものでは全くない。
  • 感染症によって状況が大きく変わる場合には、企業の資金繰り対策を超える政策対応が必要になるかもしれない。その場合には、政府と協調して躊躇なく政策を打ち出す旨をしっかりと対外的に説明すべきである。
  • わが国の物価上昇は原油・資源価格上昇を受けた部分が相応にあり、中長期の予想物価上昇率は2%の「物価安定の目標」にアンカーされていない。現段階での金融緩和政策の修正は、コロナ禍からの回復に水を差し、景気後退と物価下落をもたらしかねず、時期尚早である。
  • 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。
  • 持続的な成長と物価安定目標の実現には、企業から新たな資金需要が生まれ、資金循環が大きくなる構造が必要であり、その実現に向けた各経済主体の取り組みを把握することが重要である。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 特別プログラムの延長は、日本銀行が今後も企業金融の円滑確保に万全を期す姿勢を示すものと受け止めている。
  • 先月、政府は経済対策を策定し、これを実行するための補正予算が国会審議中である。また、来年度予算の作業を進めている。さらに、12月10日に取りまとめられた与党税制改正大綱を踏まえ、適切に対応していく。
  • 日本銀行には、政府と連携し、経済・物価・金融情勢を踏まえ、適切な金融政策運営を期待する。

(2)内閣府

  • 政府は景気の下支えや下振れリスクへの対応に万全を期し、「新しい資本主義」を起動させるため、経済対策を閣議決定した。
  • 本対策の実質GDPの下支え・押上げ効果は5.6%程度であり、スピード感をもって実施し、日本経済を一日も早く成長軌道に乗せてまいる。
  • 今回の特別プログラムに関する決定は、政府の経済対策に呼応し、中小企業等の資金繰り支援に万全を期すものであり、引き続き、緊密な連携と適切な金融政策運営を期待する。

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2021年12月16、17日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)