国債金利の急騰リスクに対応=市場安定狙い、購入減額幅を半分に―日銀 2025年06月17日 19時30分

 日銀は17日、来年4月以降の国債買い入れの減額幅を半分に縮小し、毎四半期2000億円にすることを決めた。日銀は大規模緩和の終了に伴い、昨年8月以降、毎月の国債購入額を四半期ごとに4000億円ずつ減らしている。ただ、国債の最大の買い手である日銀が減額を急げば需給が崩れ、債券価格が下落して金利が急騰するリスクがある。減額幅を抑えることで市場の懸念に一定程度配慮した形だ。
 「国債買い入れの減額が進展する中で、今後のペースが速過ぎると市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性がある」。植田和男日銀総裁は17日の記者会見で、今回の決定は債券市場の安定を狙ったものだと説明した。
 債券市場では5月半ば、償還までの期間が10年を超える超長期国債の金利が急騰。30年、40年物国債の利回りが史上最高を記録した。この金利上昇は、参院選を控えて消費税の減税論が広がり、財政悪化が意識される中、投資家が超長期国債の購入を敬遠したことなどが背景にある。また、これまで国債を大量購入してきた日銀が買い入れの減額を進めていることも金利上昇を招いた一因とする見方も根強い。
 日銀の国債保有残高は5月末時点で約580兆円と発行額の半分を占めており、市場での存在感は圧倒的だ。今回、国債購入の減額ペースを緩めたことで、金融正常化に向けた日銀のバランスシート(貸借対照表)の圧縮にはさらに時間を要することになる。
 植田氏は会見で、国債の金利上昇を懸念する財政当局への配慮から減額幅縮小を決めたとの見方を否定。「(金利急騰など)副作用が顕現化しないよう注意深く進めている」と強調した。国債金利の急騰を防ぎつつ、「日銀依存」状態となった債券市場を正常化することができるのか。その道のりは険しく遠い。 

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