くすぶるトランプリスク=USスチール「支配」強調 2025年06月14日 17時06分

【ワシントン時事】日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画が14日、実現へ大きな節目を迎えた。ただ、日鉄はUSスチールの普通株式を100%取得すると明らかにした一方で、米政府は買収の枠組みに触れていない。トランプ米大統領が強調してきたUSスチールの「支配」が経営の足かせになりかねず、「トランプリスク」がくすぶり続けそうだ。
トランプ氏はこれまで、USスチールの完全子会社化を認めないと主張。日鉄による「買収」ではなく「投資」と繰り返してきた。支持者には計画の詳細を語らず、「USスチールは米国の企業として残る」とアピール。来年秋の中間選挙を念頭に、支持者をつなぎ留めたい思惑がにじむ。
両社は声明で、トランプ氏に対し、「リーダーシップと力強い支援に感謝する」と表明。「大統領が歴史的なパートナーシップ(提携)を承認した」と記し、「買収」と表現しない配慮を見せた。ただ、関税政策を二転三転させる同氏の出方は読めず、買収の完了まで不安は消えない。
トランプ氏は13日、日鉄が米政府と国家安全保障協定を結ぶことを条件に、バイデン前大統領による買収中止命令を撤回する大統領令に署名した。これに基づき、経営の重要事項に拒否権を与える「黄金株」を米政府が保有し、USスチールを「支配」できることになる。
大統領令にはさらに、国家安保のために必要と判断すれば、追加で命令を出す権限があることも明記した。米政府高官は「USスチールは国家・経済安保の重要な要素として守られる」と強調。政府による「介入」が日鉄による経営の自由度を制約するリスクが残る。