米映画界「トランプ批判」展開=今年も政治色濃く―仏カンヌ 2025年05月25日 15時58分

「カンヌ国際映画祭」の開会式でスピーチを行う米俳優ロバート・デニーロさん=13日、フランス南部カンヌ(AFP時事)
「カンヌ国際映画祭」の開会式でスピーチを行う米俳優ロバート・デニーロさん=13日、フランス南部カンヌ(AFP時事)

 【カンヌ時事】第78回カンヌ国際映画祭が24日、フランス南部カンヌで閉幕した。開催期間中は米映画界のレジェンドらが強権的なトランプ大統領を相次ぎ批判。イラン反体制派ジャファル・パナヒ監督の作品が最高賞パルムドールに輝くなど、今年も政治色の濃い話題に事欠かなかった。
 13日の開会式は、生涯功労賞に当たる「名誉パルムドール」を受賞した米国の名優ロバート・デニーロさん(81)が「主役」。スピーチでカンヌを「(映画)芸術を愛する人々のふるさと」とたたえる一方、トランプ氏を「俗物」と一蹴。「当たり前と思ってきた民主主義のため、皆が必死に闘っている」と、米国の現状を語った。
 「ゴッドファーザー PARTII」(1974年)や「レイジング・ブル」(80年)など数々の名演で知られるデニーロさんは「映画は人々を結び付け、多様性を受け入れる。独裁者やファシストにとって脅威だ」と持論を展開。映画人は強権政治家から民主主義を守る役割を果たせるとし、「世界的な問題。非暴力の行動を起こさねばならない」と、国境を超えた共闘を呼び掛けた。
 「タクシードライバー」(76年)でデニーロさんと共演した米国のジョディ・フォスターさんも映画祭に参加。仏メディアのインタビューで「私は自分の国を誇りに思う」としながらも、「反民主主義的(政治)階層の出現を見るのはつらい」と吐露した。
 米国のウェス・アンダーソン監督はカンヌで記者会見し、外国映画への高関税賦課で「われわれは何を得るのか?」と、国内振興という名目に疑問を呈した。米俳優ペドロ・パスカルさんは、チリ系移民という生い立ちを明らかにし、「ありのままの自分でいる」ことが最善策だと強調。移民を威圧するトランプ政権を「勝利させてはいけない」と、反旗を翻した。
 独自性の強い作品を対象にした「ある視点」部門では、パレスチナ人監督のナセル兄弟が監督賞を受賞した。2人が授賞式の舞台に立つと、会場の観客は拍手喝采。イスラエルの攻撃が続くパレスチナ自治区ガザの市民に連帯を示した。
 昨年の映画祭は、イランを極秘出国してカンヌ入りした反体制派のモハマド・ラスロフ監督に特別賞を授与した。今年は同国の名匠パナヒ監督が最高賞を獲得。審査員長で仏俳優のジュリエット・ビノシュさんは「(イラン当局への)抵抗の場から生まれた作品。(カンヌの)頂点に据えることが不可欠と感じた」と授賞理由を説明した。 

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