「蜜月」関係にきしみも=岐路に立つ日米同盟 2025年01月07日 20時09分

岩屋毅外相(右)とブリンケン米国務長官=7日、東京都内(AFP時事)
岩屋毅外相(右)とブリンケン米国務長官=7日、東京都内(AFP時事)

 岩屋毅外相は7日、米国のブリンケン国務長官との会談で、バイデン大統領が日本製鉄によるUSスチール買収計画に中止命令を出したことについて懸念を伝えた。日米同盟はバイデン政権下で「かつてない高み」をうたってきたが、「米国第一」を掲げるトランプ政権の発足を前に、経済問題で既にきしみが生じている。
 ブリンケン氏は、石破茂首相らとも首相官邸で面会。この後、記者団に「4年間を振り返ると、同盟、友情がかつてないほど強固になった」とアピール。経済関係についても「非常に密接に絡み合っている。互いにとって最大の投資家だ」と強調した。ただ、買収計画に関する質問には答えず、首相官邸を後にした。
 日米関係は、バイデン政権の4年間で大きく進展した。昨年4月には岸田文雄首相(当時)が国賓待遇で訪米。同盟の抑止力・対処力強化に加え、東アジアにとどまらず世界の課題に一体で取り組む「グローバル・パートナー」を確認していた。
 それだけに、バイデン氏が退任直前に、「国家安全保障」を理由に買収禁止命令を下したことに、日本政府内では落胆が広がっている。外務省幹部は「怖くて同じようなことができなくなる」と、日本企業による経済活動の萎縮を懸念する。政府は、トランプ新政権にも買収計画への理解を働き掛ける方針だが、事態打開は見通せない。
 日米は中国や北朝鮮、ロシアの軍事動向をにらみ、指揮統制の連携やミサイルの共同生産などの協議が大詰めを迎えている。米国の「核の傘」を含む拡大抑止の強化も優先課題だ。石破政権のある幹部は「トランプ氏は損得で判断するから、『代わりに何を買うんだ』という話になりかねない」と顔を曇らせた。 

注目ニュース