【2024年12月18日~19日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2024年12月27日 18時22分
金融政策決定会合における主な意見(2024年12月27日)
1.金融経済情勢に関する意見
(1)経済情勢
- わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。
- 経済・物価の見通しの実現に向けた道筋に沿った指標が続いており、見通し実現の確度は高まっている。
- 米国経済は堅調に推移しているが、現時点では次期政権の経済政策を巡る不確実性は大きく、その影響を見極めていく必要がある。
- 米国経済は底堅く、新政権の財政政策等の下支えも期待され、ソフトランディングより早期の再加速も想定され得る。他方、指標発表等で市場が大きく変動する可能性もあり、経済底入れ期待が醸成されるまで、注意深く見極める必要もある。
- 米国経済の不確実性は、8月に比べれば焦点が下方リスクから上方リスクにシフトしている。
- 米国新政権の政策の為替市場への影響は、インフレ→金利高→ドル高となる可能性もあるが、輸出産業重視のためにドル安を志向する可能性もあり、留意が必要である。
- 金融資本市場では比較的安定的な動きが続いている。為替相場はひと頃に比べてかなり円安の水準が続いているが、為替相場のミスアラインメントが拡大すると、調整時のショックが大きくなりかねない。
- 賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から、来年の春季労使交渉に向けたモメンタムなど今後の賃金の動向について、もう少し情報が必要である。
- 雇用関連の指標をみると、人手不足はより深刻になると思われるため、賃上げ余力を有する大企業が先導する形で、来年も相応に高い賃上げが実現する可能性が高い。
- 来年の春季労使交渉は2%の物価上昇と整合的な、確りとした賃上げが期待できる。収益の還元ではなく人手確保のために「賃上げを前提として考える」という企業行動のパラダイムシフトも背景にある。
- 多くの中小企業は防衛的賃上げを実施しており設備投資との両立が難しく、その従業員は賃上げの持続性に漠たる不安を抱えていると考えられる。
- 消費者の値上げに対する姿勢は未だに厳しく、企業は賃上げの十全な価格転嫁を躊躇せざるを得ないため、賃金上昇が、個人消費の十分な拡大や、価格転嫁を通じたサービス価格の押し上げに結びつくまでには、時間を要すると思われる。今後は、問題の根底にある消費者のマインドセットの変化を見極めることが重要である。
- 個人消費はこれまでの物価上昇に対して堅調さを維持しているが、物価上昇の見通しがさらに強まれば下方リスクが大きくなると考えている。様々な物価指標からどう判断するかが極めて重要である。
- 企業は従業員の価値を表す賃金の持続的な向上に向け、稼ぐ力の向上努力を続ける必要があるが、地域金融機関にも中小企業の一回り大きくなる構造改革の伴走支援強化を期待している。
(2)物価
- 消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
- 米価の高騰や粘着性が比較的高いと考えられるサービス価格の上昇等によって、物価の実勢は強いと感じる。もっとも、予想インフレ率は安定的に推移していることから、物価が加速度的に上昇していく状況にはない。
- 消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)の季節調整済前月比は、6月以降、明確に加速し、均してみると年率3%台半ばの上昇が継続している。
2.金融政策運営に関する意見
- 経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、金融緩和の度合いを調整していく。そのうえで、金融緩和の度合いを調整するタイミングについては、様々なデータや情報を丹念に点検したうえで、判断していく必要がある。
- 利上げ判断の焦点は、国内面では、賃金・サービス価格・個人消費の動き、海外では米国の経済と政策運営、そのもとでの金融資本市場の動向である。これらについては、賃金という面では春季労使交渉に向けた動きを、米国という面では新政権発足を確認していくのが常識的である。
- 先行き、国内における税制・財政を巡る議論の行方や、来年初に米国で発足する新政権の政策スタンスに、大きな不確実性がある。そのため、リスクマネジメントという観点から、今回は、金融政策は現状維持とすることが適切だと考える。
- 物価のアップサイドリスクについては、現状では、利上げの切迫した理由にはなっていない。輸入物価は落ち着いており、円キャリーが積み上がる状況でもない。内生的にも、この3年間の賃金の上昇は物価上昇に追いついておらず、高めの賃上げが実現することが望まれる状況である。
- 経済状況の進展がオントラックである場合、政策金利調整のタイミングは、目標達成時点から逆算した利上げペース配分と、それぞれの時点での上下リスク状況という二つの要因に依存すると考える。そうした観点からは、今回は現状維持が適当である。
- 大・中堅企業や比較的規模の大きい中小企業の労働分配率が低下し明るい兆しもみえるが、まだ多くの中小企業の稼ぐ力の改善は力強さに欠ける。また、海外経済は欧州・中国の回復の遅れ、米国の経済政策動向等、不確実性が高い。経済改善の進捗をデータで確認する必要があるため、当面は現状の金融政策を維持することが適当である。
- 経済と物価は、本年3月時点の見通しからオントラックである。海外経済を巡る不確実性も変わりなくあるが、金融緩和の度合いを調整することができる状況である。
- ビハインドザカーブに陥るリスクは限定的だが、基調的な物価は着実に底上げされている。利上げを判断する局面は近いが、現段階では、米国経済の不確実性が一巡するのを今しばらく注視する辛抱強さも必要である。
- 金融政策のアクセルを少しだけ緩め、必要な場合に急ブレーキを避けつつ減速できるようにすることが必要な局面にある。
- 経済・物価が見通しに沿って推移する中、物価上振れリスクが膨らんでおり、データやヒアリング情報に基づいてフォワードルッキングに、適時・段階的に金融緩和の度合いを調整していくことが、物価の安定を通じて、国民経済の健全な発展に資する。
- 物価上昇が3年続くなか、円安進行等に伴う輸入物価の上昇が、基調的な物価の一段の底上げや「物価安定の目標」実現に繋がるだけに、前もって金融緩和度合いの調整を行うことも必要である。
- 現実的なスケジュールでの利上げによる本行財務の影響は限定的であり、本行財務の健全性は保たれることを示す必要がある。
3.政府の意見
(1)財務省
- 政府は、経済対策・令和6年度補正予算の政策の迅速かつ適切な執行を通じて、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を進める。
- 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。その上で、情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい。
(2)内閣府
- わが国経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復していると認識している。ただし、海外景気の下振れリスク等の不確実性に十分注意が必要である。
- 政府は、経済対策・補正予算を迅速かつ着実に実行し、日本経済がコストカット型から成長型経済に移行できるよう万全を期す。
- 日本銀行には、引き続き政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。
以上
[ゴールデン・チャート社]
■関連リンク
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■参考資料(外部サイト)
金融政策決定会合における主な意見(2024年12月18日、19日開催分)(日本銀行)