インボイス、周知に注力=公取委注意の大手企業も―開始まで1カ月・政府 2023年09月01日

 インボイス(適格請求書)制度の開始まで1カ月を切った。政府は事業者の不安を払拭するため、個別相談会やコールセンターの設置など周知活動に力を入れるほか、負担軽減のための経過措置も設けている。一方、立場の強い大手企業が小規模な免税事業者に不利な取引条件を通告したとして、公正取引委員会から注意を受ける事例も出始めた。制度開始後も事業者への丁寧な説明やサポートは引き続き課題となりそうだ。
 事業者は現在、売上時に受け取った消費税額から仕入れ時に支払った税額を差し引いて納税している。ただ、10月以降は仕入れ分の税額控除を受けるには、仕入れ先からインボイスを受け取る必要がある。
 消費税の納税義務がない免税事業者にとっては、インボイス発行事業者になれば納税が求められる。しかし、免税事業者のままでは販売先の税負担が増えるため、取引を見直されてしまう恐れがある。
 国税庁によると、7月末時点の登録申請件数は370万件に上り、1年前と比べると約4倍となった。内訳を見ると、課税事業者は278万件、免税事業者は92万件だった。同庁は登録を迷っている免税事業者向けの相談会を8~9月の間に計1800回開催。コールセンターでも、制度の内容やインボイスへの記載事項などについて月に数万件の相談を受け付けている。
 政府はインボイス導入に伴う負担軽減策として、免税事業者がインボイス発行事業者に転換してから3年間は納税額を軽減するほか、インボイスを発行しない免税事業者からの仕入れでも、税額の一定割合を6年間控除できるようにした。国税庁は制度開始後も相談会を継続し、課税事業者に転換した事業者が円滑に消費税を申告できるよう支援を行う方針だ。
 しかし、スムーズに制度が始まるかどうかは不透明だ。日本たばこ産業(JT)は葉タバコ農家に「インボイス制度に登録しない場合、消費税相当額を支払わない」と一方的に通告したとして、公取委から独禁法違反につながる恐れがあると注意を受けた。JTによると、当面は消費税額の80%相当を支払うことでたばこ耕作組合と合意したという。公取委は7月末時点で、独禁法違反の恐れがある事業者に対し、JTを含め18件の注意を行った。 

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