NTT、全国一律サービス焦点=競争力向上へ制約見直し―政府、来夏へ議論開始 2023年08月28日

 NTT法の見直しに向けた議論が28日、総務相の諮問機関である情報通信審議会で始まった。焦点となるのは、政府保有のNTT株売却の是非に加え、全国一律のユニバーサルサービスといったNTTへの規制の在り方。通信業界を取り巻く環境が劇的に変わる中、競争力の向上を制約する要因を見直す考えで、来年夏ごろまでに答申を取りまとめる方針だ。
 NTT法は、旧日本電信電話公社(電電公社)の民営化に伴う1985年のNTT発足に合わせて制定された。政府がNTT株を3分の1以上保有すると規定。独占的な事業を引き継いだNTTに対し、公共的な機能を果たした公社の役割の一部を担わせている。
 しかし、当時とは「市場環境が大きく変化した」(総務省幹部)ことは間違いない。携帯電話やスマートフォンの普及により、NTT東日本・西日本の固定電話契約はピークの6300万回線(97年度末)から1354万回線(2022度末)に激減。NTTの島田明社長は「数年の間に1000万回線を切る」との見方を示す。
 こうした中、「離島でも電話回線を引かなければならない」というNTT法のユニバーサルサービス提供義務は大きな重し。固定電話事業は約500億円規模の赤字が続く。
 また、国内通信業界の発展を目的にNTTに対し研究開発成果の開示を義務付けた規定も、競争力を阻害しかねないとの不安が強い。NTTは「原則として、いつでも適正な対価を前提に技術を開示する」との考え。期待が高まる次世代の光通信基盤「IOWN(アイオン)」も対象だ。
 自民党で議論を主導する甘利明氏は、「(NTT法は)今の時代に合わない。NTTは(米グーグルなど)GAFAに伍(ご)して戦うべきだ」と強調。同法の廃止によるNTTの完全民営化も検討する。
 もっとも、NTTは日本の通信インフラを担っており、同法見直しには経済安全保障上の懸念も付きまとう。また、規制緩和に対する通信業界の警戒感は根強い。NTTの関係者は今後の議論について「まな板のコイだ」と話している。 

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