中国電と関電、利害一致=核燃サイクル行き詰まり―中間貯蔵施設 2023年08月18日

 中国電力は関西電力と協力し、原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設に向け、山口県上関町で調査を実施することを決めた。実際に建設されるかは不透明だが、たまり続ける核燃料の処置に悩む関電と、「上関原発」工事が中断したままの中国電の利害が一致した格好。使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」政策の行き詰まりが背景にある。
 中国電が上関町に計画する上関原発は、東京電力福島第1原発事故を受けて工事が中断し、先行きの見通しは立っていない。交付金の減額で財政逼迫(ひっぱく)を懸念する同町は2月、中国電に新たな「地域振興策」を要請。中国電が中間貯蔵施設を提案するに当たり、金銭面で単独での建設は難しいとして協力を呼び掛けたのが関電だった。
 関電は2021年2月、福井県内3原発の敷地内に保管する使用済み核燃料について、23年末までに県外で搬出先を確定すると同県に約束した。しかし、東京電力ホールディングスと日本原子力発電が青森県むつ市で進める中間貯蔵施設の共同利用案は、地元の反発で頓挫。今後5~7年で貯蔵能力は上限に達する見通しで、搬出先を見つけなければ原発の稼働を停止せざるを得ない状況に追い込まれていた。
 今年6月には、実証研究用に使用済み核燃料の一部をフランスに搬出することを決定。関電の森望社長は「福井県との約束は果たされた」と表明したが、搬出量は約200トンと全体の5%程度にすぎず、地元からは「開き直りの強弁にしか聞こえない」(県議会議員)との批判が噴出した。
 中国電の提案について、関電幹部は「あらゆる可能性を追求した結果だ」と強調するが、「渡りに船」だったのが実態だ。
 政府は、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出して再利用する「核燃料サイクル」政策を掲げている。しかし、青森県六ケ所村の再処理工場は、原発事故後に厳格化された新規制基準への対応や相次ぐトラブルで、着工から30年たっても未完成のまま。中間貯蔵施設を巡るいざこざは、実現のめどが立たないまま先送りを重ねる核燃料サイクルのツケでもある。 

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中国電力の上関原子力発電所準備事務所=山口県上関町
中国電力の上関原子力発電所準備事務所=山口県上関町

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