電子処方箋、導入わずか2%=運用半年、実績伸び悩む―厚労省「目標達成、厳しい」 2023年07月15日

 医師が発行する処方箋をデジタル化し、薬局とオンラインで共有する「電子処方箋」の運用が全国で開始されてから、間もなく半年を迎える。政府は2024年度末にほぼ全施設をカバーするとの目標を掲げるが、導入している医療機関・薬局は、わずか2%。ほとんどは薬局のため処方実績は伸び悩んでおり、課題は山積みだ。
 厚生労働省の担当者は「この進捗(しんちょく)状況では正直、目標達成は厳しい」と話す。
 同省によると、今月2日時点で全国に約23万ある医療機関・薬局のうち、導入済みは2%の4690施設。内訳は9割が薬局(4229施設)で、医療機関側は461施設(医科診療所423、歯科診療所24、病院14)だけだ。
 導入が進まない要因の一つとして、電子処方箋を発行する際に必要となる医療従事者の資格証明書「HPKIカード」の発行に時間がかかっていることなどが挙げられる。
 このカードは医師や薬剤師などの資格を証明するもので、一般財団法人「医療情報システム開発センター」が発行している。同センターによると、申請が集中しているため、受け取るまでに通常より1~2カ月ほど時間がかかっているという。
 また、導入を見送っている鳥取県の病院担当者は「補助金も受けられるが、経費負担が大きい」と指摘する。複数の病院に通っている患者への重複処方などを防げるなどの利点が病院や患者側に十分伝わっていないといい、「義務でもないため急ぐ必要はなく、様子見をしている状況だ」と分析した。
 一方、電子処方箋を導入した全国展開する大手調剤薬局の担当者は「入力時間の短縮やミスが少なくなった」と歓迎する。ただ、これまでに電子処方箋を受け付けたのは10店舗に満たないといい、「導入と運用にコストがかかっている。早く医療機関でも導入が進むよう国が呼び掛けてほしい」と話した。
 別の大手薬局も、半年間の処方実績はわずか1件。担当者は「受け入れ体制は整っている。過渡期なので、導入にはもう少し時間がかかるのでは」との見方を示す。厚労省担当者は「導入してもらえるように、これまで以上に周知を徹底していきたい」としている。 

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厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館
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