低炭素の航空燃料に課題=普及へ問われる連携―G7 2023年06月20日

 航空業界の脱炭素化の切り札とされる「持続可能な航空燃料(SAF)」の普及促進を巡り、18日まで三重県志摩市で閣僚会合を開いた先進7カ国(G7)が連携を確認した。しかし、原料の争奪戦が起こるなど各国の足並みは必ずしもそろっていない。世界全体のSAFの安定供給に向け、過度な競争を回避して協調できるかが問われる。
 航空業界で2050年の二酸化炭素(CO2)排出「実質ゼロ」を達成するには、その65%をSAFにより削減する必要があるとされる。ただ、SAFは原料や製法によってCO2削減効果が異なり、目標実現には質の高いSAFの量産が不可欠だ。
 G7会合で採択した閣僚宣言では、国際民間航空機関(ICAO)がSAFの認定基準として設定した温室効果ガスの削減効果「10%以上」を大きく上回る、「50%以上」のSAF導入を促進する方針を明記。脱炭素化を迅速に進める姿勢を示した。
 しかし、現時点ではSAFを商用生産するのは欧米の一部企業のみ。世界のジェット燃料需要に占める供給量の割合は0.1%程度にとどまり、価格も既存燃料の2~4倍程度と高い。排出削減効果が大きい原料とされる廃食油は世界的な争奪戦となっており、原料や製造方法の多様化が課題だ。
 閣僚会合後に記者会見した斉藤鉄夫国土交通相は、「日本のような技術立国が頑張らないといけない」と述べ、SAF安定供給に貢献していく姿勢を強調した。
 米欧では既に事業者への独自の税制優遇や規制導入により、自国や域内での供給確保を進めている。日本もようやくSAF供給の拡充に向け規制や支援策の検討を具体化させたが、航空業界の脱炭素化へ、排出量の多い中国などG7以外の国も含め国際連携を深める必要がある。 

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G7会合で議論する斉藤鉄夫国交相(中央奥)ら=18日、三重県志摩市
G7会合で議論する斉藤鉄夫国交相(中央奥)ら=18日、三重県志摩市

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