中国、景気回復に遅れ=利下げ効果に限界も―世界経済の足かせリスク 2023年06月20日
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【北京時事】中国の景気回復が遅れている。中国人民銀行(中央銀行)は20日、10カ月ぶりの利下げに踏み切った。金融緩和により経済活動を下支えする狙いだが、消費や生産は伸び悩んでいる。景気の先行き不安が根強く残る中、利下げ効果には限界もあり、世界経済の足かせになりかねない。
◇回復期待外れ
人民銀が利下げしたのは、事実上の政策金利に当たる最優遇貸出金利(LPR)1年物と、住宅ローン金利の基準となる5年物。いずれも0.1%下げた。易綱総裁は今月上旬、景気悪化に対応する方針を示しており、市場では人民銀が追加利下げに動くとの観測が出ている。
中国は昨年末、約3年続いた新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を終了。これをきっかけに消費や生産が持ち直し、景気回復が勢いづくとの期待が多かった。
しかし、消費マインドの改善は鈍く、小売売上高や鉱工業生産は伸び悩んでいる。長期に及んだゼロコロナ政策の副作用は企業業績を直撃し、雇用環境が悪化。5月の16~24歳の失業率は20.8%と過去最高を更新した。
人民銀の調査によると、雇用不安を抱えるなどの回答は全体の4割を超え、消費回復につながりにくい現状を浮き彫りにしている。コロナ対策で経営するゲームセンターの一時営業停止を迫られた北京市の30代女性は、客足の戻りはコロナ前の7割程度と説明。「この先どうなるか分からず、店をたたむことも考えている」と肩を落とす。
◇デフレ懸念
さらに景気の足を引っ張っているのは、不動産市場の冷え込みだ。関連産業を含めると国内総生産(GDP)の3割を占めるとされる。住宅需要が落ち込む中で、1~5月の不動産開発投資は前年同期比7.2%減と、底打ちの兆しは見えない。
野村ホールディングスは今月のリポートで、中国経済について「融資需要の弱さが問題だ」と分析した。5月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比伸び率は辛うじてプラスを維持したが、需要の低迷でデフレに落ち込むリスクも現実味を帯び始めている。
米金融大手ゴールドマン・サックスは、今年の中国の経済成長率見通しを5.4%と、従来の6.0%から下方修正した。政府が新車購入支援策の拡充といった財政出動の強化に乗り出す可能性もあるが、景気の足踏みが長引けば、日本を含む各国の景気にも下押し圧力が強まる恐れがある。
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