魚種拡大や養殖兼業を提言=漁業不振で水産庁検討会 2023年06月15日

 地球温暖化を背景とした海洋環境の変化が、深刻な漁業不振をもたらしている。2022年の漁業・養殖業生産量は、統計を開始した1956年以降で最低を記録。水産庁の検討会は漁業者に対し、漁法や魚種の拡大、養殖との兼業化など環境変化に応じた柔軟な対応で経営安定化に取り組むよう提言した。
 農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、22年の生産量は前年比7.5%減の385万8600トンと2年連続で過去最低を更新。ピークだった84年の3割の水準にとどまる。このうち養殖や内水面を除いた海面漁業は9.4%減の289万3700トン。特にサンマやスルメイカ、タコ類が最低となった。
 日本近海では、北からの冷たい親潮の流れが弱まり、本州北部太平洋側の水温が上昇。こうした環境変化が資源量の減少や魚の分布域の移動をもたらし、多くの魚種で不漁が続く。このため、有識者による水産庁の検討会は今月公表した報告書で「取れる魚を取って市場価値を上げていく戦略」を打ち出した。
 具体的には、漁業者の経営リスク分散のため、複数の漁法を組み合わせて漁獲対象の魚種を増やしたり、需要やコストを考慮しつつ養殖を兼業したりすることを検討するよう求めた。市場価値の低い魚種は加工や流通段階での付加価値向上の必要性を指摘。輸出促進のための体制整備も訴えた。
 提言を受け、野村哲郎農林水産相は13日の記者会見で「今後、予算や制度対応を含めて検討する」と述べ、漁業の転換を支援する意向を示した。 

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