株主提案、最多の90社=取締役選任、利益還元を要求―6月総会 2023年06月10日

 「物言う株主」の存在感が増す中、今月に株主総会を開く上場企業のうち、過去最多の90社が株主提案を受けている。内容は取締役の選任や利益還元策の強化を迫るなど幅広い。企業寄りだった国内機関投資家も内容次第で会社提案に反対する姿勢を鮮明にしており、経営陣は対応に追われている。
 大和総研の集計によると、7日までに90社に348件の株主提案が出された。昨年の6月総会では76社、285件で、社数・件数ともに2割増えた。東証の要請もあって企業の資本効率に焦点が当たる中で、吉川英徳主任コンサルタントは「一部のアクティビスト(物言う株主)が積極的に提案している」と指摘する。
 石油元売り大手コスモエネルギーホールディングスでは、再生可能エネルギー事業の分離を求める投資ファンドが社外取締役1人の選任を要求。反対する会社側は買収防衛策発動を総会に諮るなど、対立が激化している。
 海洋土木の東洋建設では、会社提案の取締役選任案とは別に、任天堂創業家の資産運用会社が独自の取締役9人を提案した。資産運用会社はTOB(株式公開買い付け)実施もちらつかせ、経営権を巡り争っている。
 株主への利益還元策強化を求める提案も増えている。熊谷組には株価上昇につながる自社株買いを、文化シヤッターには純利益全額を配当に回すことを、投資ファンドがそれぞれ求めている。
 また環境団体や海外機関投資家は、トヨタ自動車やメガバンクなどに脱炭素に向けた定款変更を提案している。
 国内機関投資家は会社提案を支持することが多かったが、近年は政策保有株や業績などの基準を満たさないと反対する傾向にある。取締役選任も「会社側と株主のどちらの主張が企業価値を高めるかを検討し、議決権を行使する」(三井住友DSアセットマネジメント)という。
 エレベーター大手フジテックが2月に開いた臨時総会では、会社側の社外取締役選任案を否決。物言う株主が提案した社外取締役が選ばれ、翌月には創業家出身の内山高一会長が解任された。内山氏は6月総会に8人の社外取締役候補を提案。対立は一段と先鋭化しており、成否が注目される。 

特集、解説記事