食料安保強化へ増産指示も=有事に備え、法整備検討―農水省 2023年05月15日

 農林水産省は、戦争や凶作などで食料供給が途絶える事態に備え、農家や民間企業に対し、増産指示や流通の規制などを発動できる法整備の検討に入った。有事に際して政府が不測の事態を宣言し、省庁横断的に指揮が執れる体制を整える。ロシアによるウクライナ侵攻で揺らぐ食料安全保障を強化する狙いだ。
 「農政の憲法」と呼ばれる食料・農業・農村基本法の見直しを検討する審議会の会合で、農水省が4月末に方向性を示した。6月の中間取りまとめなどを踏まえ、政府は来年の通常国会に同法改正案を提出する見通しだ。
 具体的には、花卉(かき)を栽培する農家に穀物への転作を指示したり、事業者に生産資材の保管を求めたりすることが想定される。これに伴う経済的な負担への財政措置も検討する。
 1965年度に73%だった日本の食料自給率(カロリーベース)は長期低落し、2021年度は38%にとどまった。飼料や肥料も輸入に依存しているが、世界有数の穀物地帯であるウクライナの不安定化を受け、近年は飼料穀物や肥料原料の価格が高騰している。
 審議会の委員を務める全国農業協同組合中央会(JA全中)の中家徹会長は11日の記者会見で、有事対応の必要性に理解を示しつつ、「工業製品であれば対応できるが、農業の場合は農地と人という生産基盤があり、非常に難しい」と指摘。平時から国内生産増大に向けた体制整備をすべきだと訴えた。 

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