「最高益」へ問われる手腕=トヨタ新体制、本格始動―24年3月期 2023年05月10日

 トヨタ自動車の2023年3月期連結決算は原材料高などが響き、純利益が4期ぶりの減益となった。一方、24年3月期は生産・販売の拡大をてこに巻き返しを図り、営業利益は初の3兆円と過去最高を目指す方針だ。世界的な景気減速懸念もくすぶる中、本格始動した佐藤恒治社長率いる新体制の手腕が問われる。
 「車の供給問題も改善の兆しが見えているので(計画した)台数をしっかり造り、魅力度の高い商品によって収益につなげる」。東京都内で10日、初の決算説明会に臨んだ佐藤社長。営業収益と営業利益で過去最高という強気の見通しを示した今期の業績予想について、達成に強い自信を示した。
 今期は想定為替レートが対ドルで10円も円高に振れる一方、利益を押し下げてきた原材料などの値上がりは緩和する見込み。さらにトヨタ単体の世界生産が10.6%、世界販売が8.2%それぞれ増加して収益を底上げする絵を描く。
 生産・販売の大幅増加は、2年前から足かせとなってきた半導体不足が和らぐとの見通しが背景にある。逆風下で積み重ねた生産と調達面での工夫により、「われわれの半導体のマネジメント力は大幅に改善してきた」(宮崎洋一副社長)として達成は可能とみている。
 ただ、先行きには不透明感も漂う。ここ数年は半導体だけでなく、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻など部品のサプライチェーン(供給網)を混乱させる問題が相次いだ。それだけに、系列の部品大手からは「生産台数が伸びないリスクがある」(ジェイテクトの佐藤和弘社長)と警戒の声が上がる。
 世界経済の行方も読みにくい。主力市場の米国ではインフレ抑制を狙った金融引き締めが続き、車のリースやローンの金利が上昇。地方銀行の破綻も相次ぐ状況で、新車販売に影響が及ぶ恐れがある。中国では「ゼロコロナ」政策が終わった後も景気の回復が鈍く、消費は力強さを欠く。
 出遅れている電気自動車(EV)への対応も課題だ。特に需要が伸びる中国では苦戦を強いられており、佐藤社長は「しっかり品ぞろえして、商品力の改善をいかに機敏にやっていくかがポイントだ」と指摘する。欧米も含め新型車投入などのてこ入れを急ぐ方針で、新体制が掲げるEV強化でもスピード感と実行力が試されそうだ。 

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決算説明会で発言するトヨタ自動車の佐藤恒治社長(中央)=10日午後、東京都中央区
決算説明会で発言するトヨタ自動車の佐藤恒治社長(中央)=10日午後、東京都中央区

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